My Health , My Life Barriers to healthcare for people with a learning disability during the pandemic

My Health , My Life

Barriers to healthcare for people with a learning disability during the pandemic

 

https://www.mencap.org.uk/sites/default/files/2020-12/MyHealthMyLife_COVID%20report.pdf

 

2020年1月のデータによれば、

知的障害のある人がC-19によって死ぬ確率は一般人口の3~4倍。

年齢や性別ごとの比較では6倍に達する可能性も。

黒人、アジア系、エスニックマイノリティの知的障害のある人ではとりわけ影響が大きい。

 

2019年のLeDeR(Learning Disability Mortality Review)

死亡時の年齢 男性では一般と22年の差 女性では27年の差

(LeDeRは、メンキャップの『無関心による死』報告書、それを受けた英国保健省の調査(2010~13)を受けて、15年に開始された調査制度。(『殺させられる親』p. 166))

 

3年前からのTreat Me Well キャンペーンでは、医療専門職の研修、医療現場での合理的配慮、各現場ごとに問題に取り組む人のエンパワメント。

 

研修プログラムとしては、 Paula McGowan’sキャンペーン(研修の義務付け? 16年に亡くなった男児の親による)、The Oliver McGowan Mandatory Training in Learning Disability and Autism. 現在トライアル中。

https://www.hee.nhs.uk/our-work/learning-disability/oliver-mcgowan-mandatory-training-learning-disability-autism

 

NHS10年計画にも、知的障害のある人の医療の改善standardとnew flagging systemが盛り込まれたが、完全実施には何年もかかる見込み。

https://www.longtermplan.nhs.uk/online-version/chapter-3-further-progress-on-care-quality-and-outcomes/a-strong-start-in-life-for-children-and-young-people/learning-disability-and-autism/

2020年のデータに見られたC-19の影響

5月 LeDeR報告書に懸念表記

6月 CQC報告書 パンデミックの最盛期には障害のある死者数が134%の増加。

9月 ONS(the Office for National Statistics)のデータで、2020年7月までの期間でC-19に関連する死者の60%が障害のある人。

 

これらのデータが明らかにしているのは、C-19パンデミックにおける知的障害のある人の医療についてガイドラインが不明確、一貫性を書き、時に法に適っておらず、全国150万人の知的障害者を深刻なリスクにさらしているという事実。

 

「こうした調査とデータが多々そろっているにもかかわらず、知的障害のある人は医療への受け入れがたい障壁のために命を落とし続けている。今すぐにこの問題に対処するべく早急な行動が求められる。本報告書は、長年続いているこうした医療格差に対処するために何が必要か、勧告するものである」

 

救急搬送用要請時の問題

知的障害のある人の多くでは、コミュニケーション、必要な医療情報の適切な伝達のために当人をよく知っている人が付き添うことが不可欠であるにもかかわらず、C-19パンデミックでは救急車での付き添いが認められるのは子どものみ。本人の不安や不穏を増大させる。

ガイドラインでは「non-essentialな人(観察者、家族など)」と表現されているが、その区別は明確に定義されておらず、個々の医療職に委ねられている。

 

メンキャップは独自に、急性期病院で働いている、あるいは地域ベースで働いている知的障害看護師239人に調査(2020年6月17日~7月1日)。

回答者の4人に1人が、知的障害のある人が入院した場合に病棟に家族も支援者も付き添いを認められない事例を目撃。一人は、救急車に載せられる際に、付き添いばかりか一切の書類(病院パスポート、薬の一覧)も受け取りを拒否された事例を目撃。

 

病院パスポート

https://www.royalfree.nhs.uk/patients-visitors/disabled-facilities/patients-with-a-learning-disability/hospital-passport/

 

安全確保のために面会制限がされているが、症状を自分で訴えたり、必要な情報を自分で伝えることが難しい知的障害者の場合、PPEや以前と違う手順等が本人には理解できにくく不安につながることもあって、介入の失敗は本人の苦しみや、いのちにも関わりかねない。柔軟な対応が求められる。実際に面会制限のために治療アウトカムが悪くなった事例をメンキャップはいくつか目撃。

「医療現場において知的障害のある人に付き添いを認めることは、とりわけ病院においては、命に係わるほど重要な合理的配慮である」

 

NHSのガイダンス(3月25日)面会禁止に3つの例外を認めたが、知益障害は含まれなかった。

4月9日の改訂版では、知的and /or発達障害のある人たちのdistress回避のための例外が認められた。

5月の改定では、さらに身障者も含め、患者のニーズを支援するために必要な場合は付き添いが認められた。

しかし、現場に徹底されておらず、現場の意識によりばらつきがある。

さらに10月13日の改定には、障害者への合理的配慮について記載がなく懸念されるが、報告書観光段階では変更されていない。

 

Peterの体験

19年12月から20年8月までに水頭症の手術で入退院くりかえす。12月には家族の付き添いが認められて安心した療養できたが、6月の入院当初数週間は面会が全く認められず、困難。受けられる治療の質にも影響してくる。最後には1日1時間家族の一人の面会が認められて、helpful, comforting, and reassuringだったが、もっとあってほしかった。

 

「知的障害のある人たちには、自分の状態や自分が受けている治療について、理解するのも質問するのもむずかしいのだということを病院スタッフに、しっかり分かってもらう必要があります。同様に、知的障害のある人の中には、付き添いなしに一人にされると、苦痛があったりその他の異変を感じていても、スタッフに伝えにくい人もあります」

知的障害者への集中治療差し控えを勧めたフレイル基準のガイドライン

第1波でNICEから出された救急医療のガイドラインは、Clinical Frailty Scaleにより患者を選別するもの。日常動作の自立度を測るため、それらの行為に支援を必要とする知的障害者は治療を受けられなくなる可能性があるとメンキャップは即座に抗議。4月の改定により、65歳未満の患者と年齢を問わず固定した長期障害のある患者、知的/発達障害のある患者には用いてはならないことが明記された。しかし、当初ガイドラインの影響は続いている。また、まったく健康な知的障害者にGPからC-19感染時には蘇生を望むか、病院へ行くか、治療を望むか、慎重に考えておくようにとの手紙が届いた、とも聞いている。

 

DNARCPR

回答者の自由記述「DNARCPRは知的障害のある人にはコンスタントに出されていて、多くの場合それも不適切に出されています。……日々、抵抗していますが、それでもまだ起こっています」

回答者の54%が知的障害のある中等度あるいは高リスクの患者が不適切なDNARCPRを出されている、と語っている。

 

「この結果は、知的障害のある多くの人が医療システムにおいて直面している差別をくっきりと描き出している。これらの指示はいのちを救える治療を知的障害を理由に拒否するものとなり、法に沿わない差別の行為である。メンキャップはこの慣行に抗議し、NICEはガイドラインを改善、NHSも全てのトラスト、CCG, GPに宛ててこの問題に対応し、グッドプラクティスを求める書簡を送った」

しかし、改訂の不明瞭傘から当初の差別的なガイドラインの影響が続いている。「パンデミックの最悪期にNHSを守り病院のひっ迫を避けたいdriveが、ガイドラインの不適切な適用や差別的な対応に繋がっている」

知的障害のある人の多くが、知らないうちにカルテにDNARPCRをかかれている能性があり、メンキャップにはそうした事例の報告が今なお届いている。CQCのパンデミックでの

DNARCPRの使用に関する中間報告では、知的障害者、家族、ケア提供者からの懸念が強調されている。

 

Stevenの体験

ダウン症。43歳。GHで生活。3月にC-19感染し、救急搬送。改善したところで再度悪化し、別の病院に入院。二度目の入院2日後に父親に℡「必要となっても人工呼吸器はつけない」と医師から決定事項として告げられた。理由は血管炎の持病で免疫に影響の出る治療中のため。父親が最初の病院の血管炎の主治医に相談。この医師の介入により、必要となれば呼吸器をつけることに。2週間後、退院。

 

ケイティの体験

メンキャップのスタッフ? 3月にメンキャップが支援している人たちからGPからの手紙が届いたと連絡が届き始めた。年齢、健康状態、障害を問わず、ケアを受けている人全員に一律に出されたもの。階段を上がれるか、などの質問。GPの委員が謝罪したことで問題は解決したが、そもそもこういうことが起こったこと自体が懸念材料。

 

病院での体験

The Equality Act 2010で合理的配慮の必要が謳われている。

https://www.equalityhumanrights.com/en/equality-act-2010/what-equality-act

 

2013年の保健省の調査CIPOLDレポートで、合理的配慮の欠落が多くの死につながったことが指摘されている。

https://www.bristol.ac.uk/cipold/news/2013/19.html

 

2019年のLeDeRレポートでは、知的障害のある人は治療可能な病気で死ぬ確率が一般よりも4倍高いことが報告されている。

 

このようにC-19感染拡大以前からの状況を鑑みればパンデミックでの同様のリスクはあなどれない。

 

が、メンキャップの調査では、多くの看護師がパンデミック知的障害者がうけるケアに批判的だった。あるナースは「残念ながら、病院で私が目撃した支援は、基本的な看護ケアという点ですら十分なものではありません」。常に合理的配慮を見ると答えたナースは5人に1人。

「合理的配慮のための時間を割くことは優先順位が低い」「急性期医療の現場に、もっと多くの知的障がいナースがいればNHSのためになるのに」

 

なにが「合理的配慮」かに決まった定義はない。しかし、合理的配慮のためには感染予防の厳格な方針の変更が必要となることもある。たとえば、多職種協働など。「配慮の中にはパンデミック下では「合理的」と見なされなくなるものもあるが、全ての人の安全を確保するためには、手続きを一定程度変更することが不可欠である。24時間介護やコミュニケーションに支援が必要な人に合理的配慮を行わないなら、診断や治療のアウトカムを損なうリスクが上がる」

 

またパンデミックに伴う職員の配置換えにより知的障がいナースが異動し、サービスが受けられない事態も発生している。急性期病院では11%の回答者がチーム内で異動があったと回答。地域で働く回答者では34%。

 

回答者の多くが、レスパイトと地域でのサービスの削減が患者と家族を支援のない状態に陥らせて、心身の健康を損ない、中には危機的状態も起きている、と述べた。

 

コミュニケーションとPPE
コミュニケーションの問題がパンデミックでより深刻に。マスク等の防護具で口や表情が見えない。柔軟な、その人に会わせた工夫が必要。例えば、テディベアを持ってきて、マスクをつけて見せる。防護具を着るとナースがどのように見えるか物語で伝えるなど。家族とのつながり保つためにはタブレットスカイプなどを活用。知的障がいリエゾンナースの役割は大きい。

「急性期病院内では知的障害リエゾン看護師が、病院にくる患者のために支援とコミュニケーションを提供しています。患者のそばに付き添い、個々のニーズを説明してスタッフを安心させます」

 

合理的配慮がないために起こること

4月から6月に知的障害者の82%が病院で死亡。一般には63%。入院後のケアに問題があるのは直近のLeDeRレポートも指摘。

Treat Me Well キャンぺーンで指摘してきたのは、適切なコミュニケーション、研修、インクルーシブな態度なしには知的障害者は適切なケアを受けられないし、時には命にかかわることにもなりかねない。

 

2020年11月のLeDeRレポート。知的障害者の死の21%で、合理的配慮の必要が示されていたが、それに対応する配慮が行われていなかった。コロナ以外で死んだ人ではそれ以外の死因の人よりもそういう事例が多かった。

「コロナで死んだ人に行われなかった合理的配慮として、もっとも多く報告されたのは、病院での専門的な知的障がいサービスの提供;個々のニーズに応じたケア提供の工夫、不慣れな環境で本人をよく知っている人から支援を受けられることの保証。

 

合理的配慮が常にstandardな対応として行われていたと回答したのは19%。

 

ロイさんと娘の体験

知的障害があり、目が見えない49歳の娘。17年には臓器移植を受け、免疫抑制剤を飲んでいる。病院により、対応が全く違う体験。

 

不適切な退院

57%が、知的障害のある患者の退院時に、適切な支援を整えるための時間を十分にとっていない、と回答。ベッドを空けるために早期退院の方針が3月に出されたが、知的障害者の場合、臨床的には退院可能であっても、退院後の支援をすぐに組み立てられるわけではなく、退院が決まったら数時間で退院というような事例もあり、本人の健康リスクとともに、福祉の現場にも受け入れ準備が不十分になれば安全確保の面で懸念が大きい。9月改定の退院ガイドラインでも、障害者への配慮は盛り込まれていない。

 

リロイの体験

58歳。知的障がい。3月半ばにコロナ感染。まだ歩くのにも不自由し、息切れしているのに、退院させられ、結局数日後に再入院となった。

 

リモート診察

Overshadowingのリスク。非言語コミュニケーションや、しぐさ、姿勢、ちょっとした行動の変化など、対面なら症状を伝えるヒントになるものがリモートでは伝わらない。それが命取りになることも。例えば、便秘の合併症による入院事例が急増している。

NHSの長期計画で対面診察の3分の1をリモートに。テレサービスも同様。毎年の健康診断を先延ばしにする人も。知的障害者の中には金銭的な理由、技術的な理由でアクセスできない人も。安全性についてエビデンスも必要。もし、リモートをstandardにするなら、知的障害者は例外にすべき。

 

ブラドリーの体験

27歳。知的障がい。重度のてんかん脳性麻痺自閉症。その他の複雑な病気など。

てんかんのため、頻繁に入院。3月から15回。合理的配慮であるはずの付き添いが認められず、問題行動。職員は「なんでどうにかできないの?」と母に。研修を受けたナースはほとんどいないし、支援する時間もない。

母は一方的DNARに抗うために、ACPを書いた。

 

今後に向けた提言

「国家的危機の中、資源がひっ迫していても、知的障害のある人たちの基本的人権は他のすべての人と同様に守られなければなりません」

 

より明確なガイドライン

C-19禍の医療に関するガイドラインの主要部の中に、知的障害のある人のニーズへの対応が明記される必要がある。全国のベスト・プラクティスが紹介されるべき。

救急搬送のガイドラインも、知的障害のある人には病院までケアラーとアドボケイトが付き添えると、より明確に示すべき。

DNARCPRは、調査し、ICのない患者や適切な意思決定を経ていない人についてはカルテから削除しなければならない。

 

合理的配慮

合理的配慮はEquality Act 2010で法的に求められているだけでなく、知的障害のある人にとっては命に係わるほどに大切。何が「合理的」かは許容できる範囲によって異なるにせよ、配慮は検討し、可能なところでなされる必要がある。命にかかわりかねないのだから。

政府と国の保健機関は、C-19下での具体的な合理的配慮の事例を使って、より明確な通知を出すべき。

 

リモート診察

知的障害者はもちろん、高齢者など様々な要因で医療へのアクセスが阻まれかねない人たちへの影響を早急に調査すべき。

 

死亡事例の調査を

なぜ知的障害のある人たちがこんなにも多く亡くなっているのか、理由を知るための行動を起こし、将来繰り返されないよう予防すべき。

 

研修

この数か月ではっきりみえてきたのは、医療には文化的変容が求められていること。危機に際して知的障害のある人たちに医療がどういう目を向けているか、それを変えなければならない。犠牲になっても仕方がない人でも、(知的障害者だから)みんな同じでも、「余計な手間がかかる」人とみなすべきではない。医療現場では最も助けを必要としている、価値ある大切な人間なのだから。

そのためには、すべての医療専門職が自分の専門領域において自信をもって、知的障害のある人に柔軟で一人一人にあったケアを提供できるべく、研修が優先されるべきである。英国では、Oliver McGowan、Paul Ridd の名前を関した義務研究プログラムがある。

 

ワクチン

知的障害者は一般よりも死亡率が6倍も高い調査結果があることにかんがみ、ワクチンは優先的に打つべき。