坂田和夫 基調講演 指定発言 「家族の立場からコロナ禍における面会の制限」 日本重症心身障害学会誌第47巻1号 25~28(2022)

Ⅰ. はじめに

 

(略)

 私たち重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))のいる家族は子どもを授かり、物言わぬ子どもに問いかけ、子どもの笑顔で癒やされ、励まされ、健気に生きている姿を見ながら自らの人生をも振り返り、大切な我が子が一生豊かで幸せな人生を送ってもらいたいと願いながら面会しています。

 昨年の2月から新型コロナ感染予防対策のため緊急事態宣言やまん延防止法による面会制限が幾度も繰り返され、1年9か月近くにわたり、全く面会できていない家族や回数は会えても15分~30分の短い面会しかできない状況にあります。面会制限がいつまで続くのか、先が見えない中で入所者の家族も精神的にかなり疲れが来ています。

 また、入所者にとっても、新型コロナウイルス感染症によって環境が大きく変化しました。家族が面会に来てくれることで生きる力を培っています。感染前は会いたい時に会えていた日常が、今は辛く、切なく、哀しく、寂しく、胸が痛くなる思いで毎日送っています。重症児(者)本人はコロナ禍で日常の生活や家族との面会が閉ざされている状況を理解しているでしょうか。なぜ面会に来てくれないのか理解できない方も多く、親に何かあったのではないか、あるいは親に見捨てられたのではないかとストレスと不安で体調を崩したり、発作が増えたり、情緒不安定になったり、心身に様々な影響が現れているということを伺っています。

(p.25)

 

Ⅱ. くまもと江津湖療育医療センターの事例から

 

(略:各施設で行われている面会のタイプとして、オンライン面会、、窓際面会、ベランダ越し面会の3つを挙げたうえで)

 できることならば、子どもの側からどのような面会方法が良いのか聞いてみたいものです。

 面会はしたいが、面会すると子どもが、外出できるのではないか、自宅に外泊できるのではないかと期待してしまうため遠慮されている家族もあります。面会制限はコロナ禍でやむを得ないことですが、親子や家族の関係が薄れてこないか心配しています。

(p.25)

 

Ⅲ. 面会制限による重症児(者)への影響

 このような面会制限によって気がかりなのは、子どもの体調の変化です。親の面会もなくなり、外出や外泊もできず、不健康な生活が続くと生命の心配があります。窓際で子どもの顔を見ても笑顔がなく、このままでは生きる力が無くなりはしないか心配です。

 障がい者は言葉での不満や不安が言えず、苦しい時や辛い時は、じっと我慢するか泣くしかありません。ストレスによる食欲不振や体調不良は生命を脅かすこともあります。

(この後、守る会のアンケート結果から自由記述を例示)

(p. 28)

 

Ⅳ.  考察

 

(略)

 障がい児者の心まで蝕んでいるコロナ禍ですが、未来を見据えてこの難局を静かに見守っていくしかないと思います。全国民がワクチン接種を終え、早く収束して、日常の生活が戻り安心して面会ができることを願っています。

(略)

(p. 28)

 

 

 

鈴木由美 基調講演 指定発言「重症心身障害病棟のコロナ禍における面会の実態と今後の展望(国立重症心身協議会参加施設調査より)」 日本重症心身障害学会誌第47巻1号 19~23(2022)

全国の重症児(者)病棟をもつ国立病院機構病院及び国立センター病院(全76施設)を対象

2021年10月から11月

既存の国立病院機構の病院間ネットワークを利用し、電子メールおよび国立病院機構のインターネットセキュリティ内のMS Teams 機能に含まれるFormsを活用してアンケート調査。

 

調査対象期間は2020年3月から2021年9月

回答職種は各施設の判断で任意

61施設(回収率80%)から回答

 

緊急事態宣言の発令状況 

なし     45施設(56%)

3か月未満   14施設(23%)

4か月以上   13施設(21%)

直接対面面会を実施していた平均期間

上記それぞれ 0

       0.9か月

       1.1か月

 

何らかの制限がある直接対面面会

それぞれ   5.6か月

       4.5か月

       4.0か月

 

直接対面面会禁止期間

それぞれ  13.3か月

      13.6か月

      13.5か月

(spitzibaraメモ:感染状況とは無関係に禁止されていたことが分かる)

 

最長連続直接対面面会禁止期間

それぞれ  10.2か月

      11.1か月

      11.2か月

 

「この一方で、直接対面面会を中止していた期間ごとに施設数を見ていくと、全体及び発令なしと3か月未満の群のそれぞれにおいて19か月、つまり調査対象期間を通じて直接対面面会を中止していた施設が最多となり、全体の23%にあたる14施設がこれに該当していた」

 

5.今後のコロナ禍における面会に関する展望

1)コロナ禍における面会で目指したいこと

制限のある対面面会 28施設(46%)

オンライン(リモート)面会と制限のある対面面会 9施設(15%)

オンライン(リモート)面会の充実        7施設(11%)

感染状況に応じた対応              5施設(8%)

 

「8割超から「制限なしの対面面会」ではない形式の方向性の回答があった」

 

Ⅳ.  考察

重症児(者)病棟は病院の中の病棟ではあるものの、社会福祉施設と酷似した側面もある。このため同施設向けに厚生労働省から発出される各種通知は、重症児(者)病棟における面会等の方向性を検討する際においても参考となる。全国一律に緊急事態宣言が発出されていた2020年4月7日に「面会については、感染経路の遮断という観点から、緊急やむを得ない場合を除き、制限すること」といった通知があり、全国的にほとんどの重症児(者)病棟が面会を中止した。その後同年10月15日の通知には「面会については(中略)地域における発生状況を踏まえ面会を実施する場合は以下の留意事項も踏まえ感染防止対策を行ったうえで実施すべきであること」となり、各種留意事項が具体的に示された。今回の調査では地域の流行状況に応じて緊急事態宣言の発出期間も大きく異なったが、これによる面会の中止や制限に関する差は大きくなく、むしろ緊急事態宣言の発出が0~3か月未満と比較的流行が大きくなかった地域で「19か月連続対面面会中止」の施設が最多であり、「地域における発生助教を踏まえた面会の実施」になかなか踏み切れなかった現状が窺われた。

 オンライン(リモート)面会については9割以上の施設が導入され、昨年の同時期の調査の47%からほぼ倍増していた。課題はあるもののおおむね好評であり、安全に患者と家族とが交流を図れることから、今後の活用継続が望まれる。しかし言語でのコミュニケーションが困難なことも多い重症児(者)との面会においては、直接の触れ合いによって得られる安らぎや喜びが得られないことによる影響も大きいと推測され、「思ったより利用者が少ない」という実態もあることが分かった。愛着形成といった面からも、長期間にわたる「オンライン面会のみ」という状況は望ましいとは言えない。新たな変異株の出現もありコロナ禍の終わりが未だ見えない現状であることから、流行が比較的落ち着いている際には、本人や面会者のワクチン歴や地域のワクチン接種率なども含めたリスク評価も勘案しながら「各種感染対策を実施して感染リスクを低減した形での直接対面面会」の実施が望まれる。

(p. 21-23)

 

 

p.22は国立病院機構 下志津病院新型コロナウイルス対応フェーズ表

院内対応フェーズ1~4

 

重症児(者)病棟の面会は

フェーズ1:2名まで15分以内、粘膜部分以外直接接触化の対面(予約制)

フェーズ2:2名まで15分以内、2m間隔を空け、直接接触なしで対面

フェーズ3,4:原則中止、ドアを開けずに姿を見るのみ可

 

重症児(者)病棟の短期入所は

フェーズ1:原則として個室で受け入れる+医師の判断で必要時PCR検査

フェーズ2~4:本人および身近な人でチェックリストに該当する症状があった場合は消失後2週間後から、チェックリストの他の項目で問題ない場合、個室(エアロゾル発生治療:二重扉)のみで受け入れ可、全員入院時PCR検査実施。

 

訪問利用・車いすの調整の業者さん・学生実習(チェックリスト確認+不織布マスク必須)

全病棟:フェーズ1~3:可能な限り患者もマスク装着、患者と1m以内接触15分以内(車椅子調整等必要時は必要最短時間まで)、職員ともマスクなしの接触はなし等位「濃厚接触」該当しない範囲で受け入れ可

フェーズ4:原則延期、緊急事態宣言発令中は原則受け入れ中止

 

 

 

児玉和夫 基調講演「新型コロナ感染下における重症心身障害施設」 日本重症心身障害学会誌第47巻1号 13~17(2022)

公益社団法人日本重症心身障害福祉協会(構成員は104の法人及び団体。2021年4月1日時点で施設数135、病棟数323、入所定員の総数は13,831人)によるアンケート調査。

 

2020年4月から2021年10月までの間に4回のアンケートとワクチンの接種状況について1回の緊急アンケートを実施。

 

この講演での報告は2021年10月に実施したアンケートの結果が中心。回答施設数104。

 

全国の施設で職員と入所児(者)へのワクチン2回接種が完了しているが、8月にピークを迎えた第5波の感染がまだ残っている時期だった。

 

1.感染事例調査と各施設での対応

 

2020年8月以降全国の施設で散発的な感染が職員にも入所児(者)にも見られていた。1から6名の感染がかなりの施設から報告されているが、全数は不明。

 

2020年12月から2021年1月にかけての第3波において、全国の3つの施設で大規模クラスター感染があった。

北海道のA施設では病棟数6、全入所児(者)数335名のうち3つの病棟で入所利用者系105名、職員は71名が感染。資材の補給、感染防止をしながらの利用者ケア、職員の充当など緊急非常時対応が求められた。感染対策本部は厚労省クラスター班からの医師やICNなどDMAT・JMAT・AMDAの医師やロジスティック、保健所と施設側担当者で構成され、自衛隊看護師を含め地域内外の多くのスタッフも応援に入っている。終息宣言は2月2日であった。

 

「中等症5名以外はほとんどが軽微であり、治療は自施設内で行っている。治療経過中の死亡例はいなかったが、終息後に突然死症候群が2名いたという(詳細不明)。」

 

B施設。全入所児(者)91名中87人が感染。

C施設。全入所児(者)160名中107人が感染。一人が死亡。

 

2.地域支援事業の制限、継続について

 

短期入所

・通常通り実施 26施設

・人数を絞って実施 26施設

・止むを得ないケースのみ 16施設

・受け入れ停止 22施設

・その他 22施設

 

受け入れるための工夫として、直前のID NOW検査で陰性確認という施設が多かった。抗原定量検査の施設、簡易検査の実施としている施設も。ただし簡易定性検査は結果の信頼性が高くないという欠点あり。 

 

受け入れ方法

「個室で対応し、入浴は最後にする。入所者との接触はなしにする」

「病棟居室内での利用はなしにし、短期入所ユニットで実施」

「病棟以外の住宅部の居室で受け入れ、在宅部職員で対応する」など。

 

「ワクチン2回接種を条件に入れるかどうかは議論があった」

 

通所事業

・通常通り実施 45施設

・条件付きで実施 33施設

・縮小している 9施設

・停止している 1施設

・その他 9施設

 

条件としては、一般的な健康チェックのほかに、感染地域からの訪問や行き来を避ける、同居者が感染者化濃厚接触者の場合は中止、他の事業所との併用禁止など。工夫として、送迎バス乗員人数の制限や利用人数の制限、自家送迎をお願い。

 

家庭や地域からの感染関連ケースの受け入れ

 

家族が感染あるいは濃厚接触者となり、在宅重症児(者)を看られなくなった時に受け入れ可能か、という問いを行った。

 

できないとしたのが82施設

条件によっては可能という施設も17施設。

(多くは、PCR検査で陰性が確認された場合、その施設の利用者であれば考慮)

 

兵庫県では民間の施設間での協定を結び、神戸のにこにこハウス医療福祉センターに専門病棟を建設し、そこで在宅重症児(者)を受けることにしている。他の施設でも専用病室を用意できるところで受け入れるか、他施設に職員を応援派遣するなどの協力を行う。このシステムの病棟建設には国も出費し、職員の応援派遣に伴う出費は神戸市が補助することになっている」

 

家族との面会、外泊、外出

 

1)入所児(者)に対する家族との面会について

・制限なしに可能としたのはゼロ

・一定の制限を付けたのが 74

・原則停止が 16

・ICTなど他の方法で実施が 51

 

条件や工夫の代表的なものとしては

・オンライン面会や窓越し面会、2回ワクチン接種後2週間以上経過の家族は対面面会10分以内

・直接面会中止、窓越しでの面会の実施、週に1度LINEでのテレビ電話面会

・急変時やターミナル期のみ面会可、月に1回リモート面会(Zoom使用)

・LINE面会、来院して別室でタブレット面会、面会室でフェースシールドをして対面面会を段階的に実施(月2回)

・病棟ドアを開けて、距離を2m以上とって面会(週に2回以内 1回に1組 30分以内)

・グーグルデュオというアプリでのビデオ通話を週1回、1回5分間で

・面会者がワクチン2回接種者で、アクリル板を通して実施

 

外泊、外出

外泊

・制限なしで可能としたのは 0

・一定の条件で可能 10

・原則中止 93

 

・終末期にある方については特別な措置として実施することもある。

・他科受診等、やむを得ない場合のみ

・自宅のみで過ごし、同居者以外との接触禁止

・本人及び滞在先の家族がワクチン接種を終えている。滞在先から外出しない。

 

外出も92施設で原則中止。

 

活動も「多人数が参加する活動や、外に出かける活動はほとんどが中止」。

新たな工夫として、「活動の単位をできるだけ小さくし、個別性を高めているところが多かった」

 

入所者のマイナスの変化

・運動機能、摂食・嚥下機能、認知機能の低下、異常行動の出現

・家族との面会が限られ寂しい旨を訴える利用者が散見される。ー特別に面会許可で対応。

・生活が単調になる、活動量の低下がある、筋力が低下した。

・イライラ、活気なし、情緒不安定者が増加、表情の乏しさやストレスによる激情化

・外出できない事でのストレスによる自傷行為(髪を抜いて食べる)

・言語理解が少しでもある方は、寂しさやストレスをため込み、泣いたり、自傷行為や大声を出すなどの表現を表出することが増えた方もいる。

・生活場所の制限があり、気持ちの切り替えなどが難しい人は対応が難しかった。

・活動量の低下(面会時の散歩など)、表情が乏しくなった(ガラス越し面会時差が歴然)

・ストレスからくるものかと思われる円形脱毛

車いす乗車ができないと、身体の拘縮・便秘者の増加が顕著に表れた利用者もいる

・運動量の減少により体重増加。家族に対応する反応が薄くなった。白髪が増えた。

・活気、反応が落ちたと感じる人がいる。ベッド離床減で背中や後頭部の皮膚トラブルが増えた

 

5)入所児(者)の変化についてープラスの変化

「家族との面会が少なくなり却って落ち着きが出てきた例、自閉気味の利用者の自傷行為が減った、家族以外ともコミュニケーションが取れるようになったという報告もあった。何よりスタッフとの関係が深まり、個別の支援ができだしたことで今までの全体療育活動では見られなかった表現の変化が出てきたという事例が少なくなかった。リハビリテーションも病棟に専属的に入り、個別に行うことで他のスタッフとも課題が共有でき効果が上がったという。他にも外出などが減少し、発熱がない、体調が安定したという報告は多い」

 

「Ⅲ.最後に」から抜粋

「支援の関係をより密に、個別性を高めたものにしていくということは、今まで行ってこなければならなかった事であり、今回の教訓を生かした明日の療育につなげていく貴重な体験と思いたい」

 

 

 

 

 

川口有美子 新城拓也 『不安の時代にケアを叫ぶ ポスト・コロナ時代の医療と介護に向けて』(青土社)

以下、ゴチックはspitzibara

 

コロナ禍での面会制限・医療についての箇所 

 

新城 今COVID-19の影響で家族が病室にいない。それでびっくりするほどいろんなことがどんどん決まっていきます。

……

新城 本人の苦痛緩和優先で、病院では家族がどう感じているかなどは、面会が制限されて、病室に普段いないため後回しもしくは無視する状況です。

川口 この感染状況では入院患者に会わせてもらえませんからね。

新城 医療従事者の中には、本音を言えばむしろコロナ時代に仕事が楽になったひとも多いはずです。病棟にひとが少なくなったからこそ、自分たちのペースで一日を運営することができる。コロナで家族の面会制限を続ける理由は、病院での感染拡大を防ぎ安全第一で運営するためだけでなく、この楽な状態を続けたいためでもあるでしょうね。家族のケアまでしなくてもいいですから。

……

新城 痰の吸引も、家族が見ていたらすごいプレッシャーのなかで苦しまないように一挙手一投足丁寧にやるのに、誰も見ていないとぱぱっとやってしまうという話も聞きます。

川口 ……コロナ禍で病院のケアの質が下がってしまう病院もあるんじゃないかと心配です。もちろんちゃんとしている病院施設が大半でしょうが、そうでない病院にとっては、コロナ禍が言い訳になるし、誰も咎めませんから。

新城 おっしゃるとおりすごく質が下がっていますね。以前から一般の病院でもときに患者さんを拘束していました(もちろん患者の入院時には家族は一律で、身体拘束の必要があるときには医療者の判断で拘束するという同意書にサインをしている。いや、させられる)。家族が病院に入れなくなったために、そんな酷い状況が見えづらくなっている。実際に私の親類が入院した2020年の7月にも、身体拘束の同意書を入院する前の救急外来でサインしたために、翌日にはベッドに身体拘束がされていました。しかし、身体拘束がされている親類の姿を見て、憤りを相当感じていても、私は顔見知りの看護師に対しても何も言うことができませんでした。

 ……

新城 せめて医療従事者は患者さん側に立たないといけないですね。「コロナだからあきらめて、コロナだから仕方がない」と病院側に立って、今までなら非人道的でできなかった面会制限や身体拘束をさっさと決断して進めていくのは本当にまずいことだと思います。

(p. 27-30)

 

新城 ……現状では、残念だけれど家族の看病や介護がないと、在宅医療は成立しないのが普通です。最近、私と、在宅医療を行っている全国の診療所で調査してレポートを出しましたが、家で亡くなったひとの90%に同居していた家族がいるんです(新城拓也・清水正克・三宅敬二郎他「自宅で療養するがん患者の状況と死亡時の医師や看護師の立ち合いについての調査研究」『Palliative Care Research』15巻4号、2020年)。さすがに90%はすごい数字です。家族の介護者がいないと、家で死ぬことはできないという現実が窺えます。

……

新城 家族の役割は、亡くなるだろう患者にとっては、とても必要な存在です。一方で、面会ができなくなって「やれやれ、よかった」と思っている家族もいるはずです。例えば遠方から仕事の都合もつけて、週末に何度も面会に来ていた家族にとっては、「病院に入れないから、行かなくていいんだ」となるでしょう。自分の生活に専念したい家族にとっては、「面会できないのは、コロナだから仕方がない」と自分の心に折り合いをつけることになるのです。

(p. 30-1)

 

新城 ……

 (初めて新型コロナに感染した人を在宅で看取った経験を語った後で)このとき、今までに経験したことのない苦しみを目撃しました。一つ目の苦しみは、家族のうち誰が患者さんにウイルスを移したのかが分かってしまうということです。

……

 二つ目の苦しみは、自宅療養していた患者さんが入院すると二度と会えないか、会えてもわずかな時間になってしまうということです。病院の面会制限は、自宅療養している患者にとっては入院をあきらめる相当なハードルとなっています。こうした事態に相対して、恩情のある例外(compassionate exeption)を提案する論文(略)を読みました。新型コロナウイルスの感染者ではない終末期の患者さんに対して、面会制限の緩和を行う例外措置の提案です。

……

新城 このような面会制限のある現実に直面して、在宅から入院に切り替える際に、在宅で介護していたご家族のみなさんは、以前よりも無力感を感じ、「私の力が及ばず、最期まで家で看病できなくて、ごめんなさい」という気持ちになっていらっしゃいますね。一方、患者さんも「自分が入院しないと、家族みんな倒れてしまう」と言いながら入院を決めていきます。そのとき、病院に入院すれば、会えなくなるに等しいくらいの状況になることは理解されています。今生の別れを生きているうちに決断する患者さんの心中は、どんなものなんだろうと私は今までに経験していない思いを持ちます。

……

新城 私からすれば、患者さんの入院を見送る家族は、物理的に「会えない」以上の苦しみを味わっているように見えます。「生きたまま、家族場に行かせる」感覚に近い、苦しい体験のようです。もちろん現実は異なるのですが、気分としてはそれくらい辛いものです。

(p.86-89)

 

新城 とはいえ、中小病院や施設でクラスターが発生したときに、「大病院に搬送せず、ここでなんとか頑張ってください」と言われているのは本当です。施設の職員皆さんもできるだけ感染予防に気をつけつつ、これまでのケアで大事にしていたことは大事にし続けたいと踏ん張っています。実際、デイサービスや、みんなで食事をすることは今も続けています。

 こうした状況下で、万が一施設でクラスター発生したりして、医師の治療を受けられず、施設に留められる場合もあるということを事前に本人やご家族に伝えておいた方がいいんじゃないかと思い始めています。しかもそれを堅苦しい免責事項のように伝えるのではないかたちで。自分の関わっている高齢者施設では、「もし施設内で新型コロナウイルス感染症に感染したら、できるだけのことはするけれども、それ以上は無理なのであきらめてほしい」ということを伝えることにしたのです。

(p. 101)

 

新城 また、入院した際の身体拘束の問題もあります。拘束には3つの方法が知られています。まずひとつは器具をつかってベッドなどに括りつける文字通りの身体拘束です。……もうひとつは薬物による鎮静で身体の動きを奪う薬物による拘束(ドラッグロック)です。三つ目は「ここから動くな」という言葉での拘束(スピーチロック)です。コロナ禍では、入院の付き添いができないこともあいまって、患者さんがこのどれかの方法で早い段階で拘束されてしまうケースが多発していることも問題です。自分が勤務している病院でもこのような状況は現実にあります。

……面会のない病室では、家族との交流がない、家族の評価がないことから、むしろ薬を強めてしっかりと眠らせて苦痛を緩和する傾向があります。

……この状況は、誰も事前に説明を受けておらず、誰も同意していないという意味で、私は薬物的に拘束していることと同じではないかと感じてしまうんです。

 こうなってくると、これまで大事にしてきた緩和ケアや終末期医療のあり方がすべて崩れてしまうんです。本来、短い時間であったとしても密度濃く練り上げて、最後の週末の鎮静や治療の仕方を決めていくところ、なんでも簡単にぱぱっと決めていくことが起こっている。私自身も親類が、入院中の病院で身体拘束された経験をして、これは家族にとっては相当な苦痛だと思いました。拘束されていても病院のひとたちには異議を言うことができませんでした。やっぱり同じ医療者であっても家族の立場になるとものが言えなくなるのです。
(p. 107-8)

 

新城 現実に起こったことは、それぞれの現場でのトリアージでした。人工呼吸器をつけるかどうか以前の、入院させるかどうかというトリアージなので、医療資源の配分以前問題でした。例えば高齢者施設で複数の患者を診ていました。そのなかで誰か一人しか入院できない場合、それを誰にするのか結局私が判断しなければならないということが起こりました。その際に何らかの基準を設けて数値化してトリアージするなんてことはできません。言ってみれば、明確なルールなしで自分の勘で判断して入院する人を決めるようになりました。そこで見えてきたのは、コロナに感染しても入院できないとなると、そのひとがどういう基礎疾患をもっていようがもっていなかろうが、年齢を重ねていようがいなかろうが、公平に、その人の運だけで生き残れるかどうかが決まってしまうということでした。

 私が在宅酸素や薬をすぐに届けたとしても、結局そのひとの運によって行く末が決まってしまう。そのひとの運に、少し加勢することができるのが医療という当たり前のことを痛感することになりました。そうした医療のありようは、最低限のレベルのものだと思うのですが、実際にそういう状況になったんです。

(p.166)

 

新城 ……209年までは……豊かなQOLを模索するいい時代です。しかし、コロナ禍となった2020年以降はQOLの範囲が突然小さくなっていく危機を感じました。多様性の追求以前に「生きてさえいればそれでいい」といった、貧相で、シンプルな考え方に移行したと思うんです。医療に関しては「患者本人ファースト」を追及していたわりに、病院機能の制限ばかりが目に付くようになり、病院の患者さんのQOLは相当に低くなってしまいました。家族と面会できない、外出できないという状況は、入院することと留置所にいることと同等のQOLではないでしょうか。「病院ファースト」の時代に逆戻りしたと感じます。

(p. 190-1)

 

新城 ……私からするとコロナ禍によって家族のありようが変わってきたことも考慮に入れなければならないと思います。家で介護しながら仕事することができるようになった良さよりも、家族の構成員みんなそれぞれが、社会から隔絶され自宅の狭い空間で悶々としている悪い面が目に付くようになっています。それに加えて、老々介護をしている高齢者世帯では、子どもの援助が得られにくくなっています。遠方から訪ねられないという理由で、親を見に行けない自分の心を正当化できますし。そういった悪い面も出てきているように思います。

 病院でも、面会制限を病院から言われると、介護する子どもたちの側は自分生活に没頭できて、親の介護を通してやり取りする重要性が見えにくくなる。ですから、私としては一人一人が他人のために自分の時間や労力を費やさなくなったことが目に付いてしまいます。

(p. 210)

 

新城 ……

 私の周りで今問題になっているのは、ケアを大切にしていた医療者たちの離職です。

……

 こうした離職はすごく気になっています。……現状を変えようと思う志をもったひとはたくさんいるんですが、一方でそれをやめさせようとする、つまり現状の病院のロックダウンを変えないようにするひとも大勢いることが分かりました。患者と家族の交流を増やしたい、在宅への移行を促進したい、外出・外泊をすることで患者さんが在宅慣れしていくように準備をしたいと言っても、すべてがコロナを理由に上層部からその案がつぶされていくわけです。それで医療者の心が折れてしまっている。ケア志向の強い私のような医療者は、心のどこかを殺して仕事をしているのが現実だと思います。

(p. 211-2)

 

新城 ……

 病院の診療やケアの質がすごく下がっていることを実感するから悲しいのです。恐らくですが、人手が足りないというよりも、医療職が患者さんに心を配分することが以前よりもさらになくなっていることの表れのように思うんです。

 確かにこの間、発熱外来、ワクチンの業務といった、今までやったことがない業務がいくつも入ってきました。こうした対応に心と時間を奪われている間に、本来病院でケアの質をあげるために努力をし続けなければならないという考えもすっかり抜けてしまったと感じています。病院の医師も看護師も「今は非常時だから、ぎりぎり最低限のことで回していくしかない」という現場感覚のままずっときています。そうなると、必要最低限だけのケアしかしなくても、「今はこれでいいんだ」と思ってしまうのです。ケアの質を追求しない姿勢になってしまうんですよね。

(p. 228)

 

新城 ……2020年からは、相当強い面会制限をどの病院もするようになりました。患者の人権を無視するような方向に動き、病人が社会から完全に隔絶される方向に戻ってしまっている。15分間、家族のみ、一人だけの面会は留置所の面会のルールよりも厳しいです。病院が留置所、収容所と化していた時代に戻っているのに、患者側はそれを問題視する方向に動いているとは思えません。みんな従順に仕方がないと受け入れています。2021年秋、「病院は家族だっても面会できない、そういうところだ」ともう常識化しているとすら感じます。

(p. 234)

 

新城 ……私の嫌いな言葉なんですが「もやもや」することをすっきりさせるのが倫理だと思っている医療者が多いです。だいたい倫理というのは道徳と違って、答えが定まっていない領域なんです。医療者は「もやもや」する前に、自分の常識や内面化された固定観念を問い直してほしいなって思います。ひとから答えをもらうために倫理を利用するのはやめてほしいなと思います。

(p. 252)

 

新城 ……私は、何度も言ったとおり医療がとても雑になってしまったというのがこの二年間の想いとしてあります。そして、「医療者の皆さん、いつもありがとう」とコロナの患者の対応を市民からねぎらわれてしまった結果、現状を反省しない心ができ上がってしまいました。ですから、今一度丁寧に医療やケアをやろう、と叫びたいですね。……(p. 265)

 

新城 ……

 2021年11月から2022年正月まで、新型コロナウイルス感染症の第五波が過ぎ、奇跡的に患者数が減り続けて、落ち着いた状態が続いていました。世の中は平成と活動を取り戻しても、変わらずマスクをつけたまま外出しています。そして、科学的なエビデンスを大切にしてきたはずの医療現場、特に病院は、この落ち着いたわずかな間も相変わらず、面会を相当に制限しつつけており、全く科学的でないことを続けていました。それでも患者も家族ももう諦めて「仕方がない」と病院の中で孤独に病気と向き合っています。そして正月が終り、わずかな間に感染者は激増して、また新たな不安の波が押し寄せています。

(p.273)

 

 

終末期ケア・緩和ケアについての箇所

 

新城 ところで、鎮静や最後の手段としての苦痛緩和として、モルヒネを使うと連想する方が多いのですが、実際は違います。モルヒネでは最後の苦痛は緩和しきれませんし、ましてや致死させようと思っても、量を増やしてもなかなか死に至ることはありません。やはり睡眠薬を使わないと苦痛は緩和できません。

 やはり緩和ケアが一般的には、どうも心掛けとして学ばれている感じがして問題に思っているんです。つまり、緩和ケアとは、苦しむ患者さんや命の最期を迎える患者さんに優しくすることだと、医療者や一般の市民から思われているのではないかと感じるのです。

川口 情緒的でスピリチュアルな行為を「緩和ケア」と呼ぶこともありますが、患者は専門的な知識に基づいた的確な痛みの軽減を望んでいるんだと思います。

(p.37-8)

 

川口 医学部で緩和ケアの講義自体はあるんですか?

新城 6年間のうちに数コマ程度です。実技というより「概念」を習うという感じですね。

……

新城 現在では1日から2日の短い研修をして修了証をもらうと、「緩和ケアの教育を受けた」という認定証をもらえます。

……

新城 ……緩和ケアを行うには専門の医療技術が必要です。痰の吸引の技術と同じように、教えて人に伝えられる技術がある。「心掛け」や「心持ち」を緩和ケアとしてとらえていたら失敗します。でもせめて、緩和ケアを一般の医師に広く知ってもらえるなら、興味を持ってもらえるならと、二日間のプログラムをつくり、私も今までよく教える側にいました。患者さんとどういうコミュニケーションをもつのか、コミュニケーションはどう構築するのか、どういう質問が、患者さん、家族にとって大切な問いかけなのかの第一歩は学べます。そして身体の苦痛を緩和するための方法も学べます。でも研修医むけの内容ですね。

……

新城 緩和ケアに関して言うと、医師が「自分でできているつもりになっている」というのが恐ろしいところです。京都の安楽死事件を起こした方も、自分は安楽死と緩和ケアを同時にできているつもりになっていたのではないでしょうか。

 緩和ケアの質というのは、手術の質を上げるのと同じくらい、指導医がきちんと助言しないと高まりません。しかし、指導医の助言を受けられる状況にはないのが現実です。

……

新城 まずは養成する仕組みをつくらないといけないですよね。緩和ケアを自分の仕事に取り入れたいと思うひとは、自分の近くのホスピスで最低一か月研修してくだされば、相当に状況はよくなると思います。さらに、周りから自分の治療が口出しされるのが普通にならないと。そういう病院のシステムづくりが必要です。

(p. 43-4)

 

新城 (気管切開するとALSの患者は安心するが、逆に不安や痛みが増す人もいる、との川口発言を受けて)でも気管切開をしないと決めてしまった人は、最後はセデーションするしかありません。痛み止め(モルヒネ)だけでは、最後の苦しさは解消できないんです。

川口 私は大腸内視鏡の検査をするときに、薬をつかってもらって、三秒で意識がなくなったのですが、あの感じですか?

新城 全く同じミダゾラムドルミカム)という薬で同じ手法です。

(p. 57-8)

 

新城 ……実際、DNRは現代医療の引導の私方として標準的なものとなっている。しかしこれには、覚悟や責任みたいなものは感じられません。やはり業務的な取り決めに過ぎないと感じています。

……DNRの他にも、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)なんかもそうですね。患者さんに「あなたは死ぬかもしれない。覚悟を決めてください」と引導を渡すのは、医療職にとってかなりキツい仕事です。ですから、意味を薄めるようなコード化が行われているわけです。

(p.110)

 

 

安楽死関連の箇所

 

新城 だいたい10分以内くらいに死に至らなければ失敗と言われています。安楽死は失敗すると取り返しがつかない。というのも、もし失敗したら、その後の苦痛を医師が緩和することができないのですから。

(p. 60)

 

新城 ……患者さんに「どこで最期を迎えたいですか?」と医療者が問えば、患者さんもその家族も何らかの答えを考えてはくれます。でも現実的には「自宅」か「施設」か「病院」の三つしかないのですから、その中で選んでもらっても、そのひとの人生観や価値観が反映されているのか、ひとの死は最期の場所を決めることでよりよいものになるのだろうかと、いつも考えてしまうのです。また、人間が望んだ死に方をするという欲望を果たしていくのは、不老不死の欲望と実現させることと同じくらいナンセンスなものではないかと思うんです。そこまで人間本人の欲望を、死の瞬間まで追求していいのかと疑問に思っています。

(p. 92)

 

 

 

地域移行関連

 

川口 ……地域生活を継続するのもそう簡単ではなくって、京都で今回ALS女性の嘱託殺人事件が起きました。重度訪問介護制度を利用して、24時間の介護を受けながら独り暮らしをしている自立した方でした。私自身とてもショックで、事件の真相の深い部分はわかりませんが、改めて地域で暮らせていればそれだけでいいとか、ヘルパーさえ24時間入ればなんでもいいわけではないことを突きつけられています。

(p. 75)

 

 

 

幸田文『生きかた指南』(平凡社)

「重い母」

 

 お母さんが重くて困る、ということをこの秋2度ほど続けて聞いた。

……

 濃すぎる愛情を、思いという表現で言われたのが「いまは、軽さのよさ、の時代だ」と有難がっている私に、強くひびいた。

 私が有難がっているのは、身のまわりの道具類がいまは軽くこしらえられていることなのである。むかしはなんでも重かった。第一が水で、つるべやポンプで汲む重さ、くんだ水は水桶にうけるのだが、一年中乾いたことのない手桶の重さは腕にこたえる。その水を水がめにためるのだが、かめには水ごけがつくし、それを洗う作業の重さ。

……

 若いお嬢さんたちが、うちにいるのももう少ないのだから、母とはよりよい付き合いで過ごし、さらさらとした後味を残していきたい、というのは心してきかなければいけない事ではなかろうか。母の愛はぜひ必要なものだが、母のみならず愛情はすべて、濃過ぎれば悩みに沈むし、至れりつくせりの世話は人の心に重しをかける。私たちは軽快な愛情というものになれていないが、軽く使い勝手のいい世帯道具を手にする時、重い母と言われないように一考するのがいいと思う。

(1965年 61歳)

p.153-5

 

●この時代の早くから「母が重い」と感じ、そのままが言葉にされていたこと、それに対する幸田文の捉え方の鮮やか。

 

……つまり出来る人は、人から賞賛もされますが、また人の気をそこない、恨みや不快も買うのです。出来るというのはいいことに違いないけれど、同時に人を傷つけ、自分をも傷つけてしまういやらしさをも伴っている、というわけです。ですから、出来れば出来たで、その後始末がいるのです。心して慎む、という後始末です。

……

 なににあれ、ものができなければ困ります。出来れば出来たで、いやらしさが附着し、人ををも自分をも不快にします。出来たら、その後始末をうまくつける――そんな人が手がたい仕合せを積み上げていくひとなのではないでしょうか。仕合せとは、終わりの納まりのいいことかと思います。

p. 231-5

伊藤昌亮『炎上社会を考える 自粛警察からキャンセルカルチャーまで』中公新書ラクレ

……したがってそれ(spitzibara注:新自由主義)は、経済政策としての考え方よりも、むしろ社会規範としての振る舞い方を意味するものだ。そこでは評価のための競争が絶えず繰り広げられ、監視のもとでの制裁が絶えず繰り出されることになる。

 実はそうした一面が、炎上社会の重要な構成要素となっているのではないだろうか。つまり炎上という現象は、単純差左右対立の構図からストレートに生じるものでは必ずしもなく、新自由主義というもう一つの立場がそこに組み込まれることで、加速されていくという一面を持つものなのではないだろうか。

(p. 8-9)

 

 コロナ禍での自粛警察について

 

 つまりそこには、一方では感染防止に向けた総動員体制を強化し、そのための相互監視を徹底させるという、戦時下の全体主義的な思考に通じるような論理があり、他方では感染リスクの回避のためにコンプライアンス違反を告発し、厳罰に処するという、二十世紀末以来の新自由主義的な思考に基づくような論理がある。

(p.31)

 

 

New Federal Guidance for Healthcare Providers on Civil Rights Protections for Individuals with Disabilities During the COVID-19 Public Health Emergency

Phychogeriatrics誌のコメンタリーで触れられていたガイダンスに関する記事を読んでみた。

 

2022年3月4日の記事

seed.csg.org

 

米各州がパンデミックにおける医療ひっ迫の際の医療資源分配をめぐってガイドラインについては、2020年にいくつかの州で障害者を違法に差別するものだとの苦情申し立てが相次ぎ、保健福祉省と公民権局(OCR)が、アラバマノースカロライナペンシルベニアテネシーとユタの各州で和解させたほか、テキサス州の関連機関との苦情解決、コネチカット州では障害のある人の面会制限についての苦情解決にかかわるなど、乗り出した。

 

こうした事態を受け、このたびOCRから医療的危機状況においても障害のある人の公民権保護の法的重要性明確にするため、医療職向けにガイドラインが出された。

 

FAQの形で出されたガイダンスの当該部分では、医療資源の分配に次を考慮に入れることについて、いずれもNOと回答されている。

  • Whether an individual with a disability or an individual who is likely to have a disability after treatment will have a lower quality of life or relative worth to society compared with an individual without a disability who also requires treatment.

 

 障害のある人または、治療後に障害をもつことになると見込まれる人は、治療を必要としている障害のない人に比べて、QOLが低かったり、社会にとっての価値が相対的に低いかどうか。

  • Whether they can provide healthcare or deny a resource to an individual with a disability who has COVID-19 if it may require more of the resource than treating individuals without disabilities for COVID-19.

 

 障害のある感染者は障害のない感染者より治療に余計な資源を必要とする可能性があるかどうかによって、医療を提供するか、拒否するかを決める。

 

  • Whether they can consider that an individual with a disability may not live as long as an individual without a disability after treatment.

 

 治療後に障害のある人は障害のない人ほど長生きしないかのうせいがあることを考慮に入れる。

 

 

ちなみに、

ガイダンス原文はこちら。

www.hhs.gov

面会制限に関する箇所は以下。

 

具体的なリスクアセスメントに基づいての面会制限は、終末期の限定的な例外を除き、公民権の侵害には当たらないとしつつ、コミュニケーションや意思決定の支援等、適切な医療を受けるために必要な場合には、個々の障害者のニーズにより適宜、個別に対応すべき、としている。

 

Application of Section 504 and Section 1557 to Visitation Policies

8.  Many acute care and long-term care settings have restrictions on visitors, limiting entrance to patients, residents, and personnel with limited exceptions for end-of-life situations.  How do Section 504 and Section 1557 apply to such restrictions?

During the COVID-19 public health emergency, some hospitals developed stricter visitation policies or started to enforce existing visitation policies they had not earlier enforced, because of a concern that anyone visiting the hospital could pose an additional risk of COVID-19 to patients and staff.  In general, such restrictions are permissible under Section 504 and Section 1557 if those restrictions are in place for safety reasons based on objective risks.  However, where these policies do not account for the needs of people with disabilities, they may result in unequal care and violate Section 504 and Section 1557.  For example, when a patient’s disability prevents them from providing their medical history or understanding medical decisions or directions, the medical provider should explore whether a modification to its visitor policy may be safely carried out.

Reasonable modifications to visitation policies

Some people have disabilities that prevent them from providing their medical history or understanding medical decisions or directions.  Permitting a patient or resident with a disability to use a support person when necessary to have an equal opportunity to obtain and benefit from healthcare services is a reasonable modification that generally must be provided unless it would fundamentally alter the nature of the service, program, or activity or impose an undue financial and administrative burden.  For example, a hospital may be required to allow a support person to participate in a consultation so the support person can explain the information exchange in simple, understandable language to the patient, and ensure that the provider has the information necessary to treat the patient.  Whether a covered entity must allow the support person to be physically present as a reasonable modification depends on a number of factors, including safety issues and whether remote participation would be effective.

In some situations, a covered entity will be able to meet its obligation to provide a reasonable modification by enabling a support person to communicate remotely with a patient (by voice or video phone calls) when needed by the individual with a disability.  In others, the support person will not be effective unless present in person, because of the nature of the individual’s disability or the type of service provided by the support person, or for other reasons.  Where the individual is entitled to an in-person support person, covered entities should take necessary steps to allow the support person to be present when needed.  Such steps may include modifying visiting hours and visitation restriction policies.18

Legitimate safety requirements

Section 504 and Section 1557 allow covered entities to have legitimate requirements necessary for the safe operation of their services, programs, or activities.  However, covered entities must ensure that their safety requirements are based on actual risks, not on mere speculation, stereotypes, or generalizations about individuals with disabilities.19   Covered entities can therefore require support persons and interpreters to comply with safety requirements, such as requiring them to participate in temperature checks and other screening measures and to use Personal Protective Equipment (PPE), and can refuse entry to individuals who refuse or fail to meet these requirements.  

In addition, the use of a designated support person by an individual with a disability for decision-making and tasks other than effective communication does not eliminate the responsibility of the setting to ensure effective communication and provide appropriate auxiliary aids and services to individuals with disabilities when necessary to provide effective communication.  Covered entities are required to take steps to ensure that their communications with people with disabilities are as effective as communications with others, except where a covered entity can show that providing effective communication would fundamentally alter the nature of the program or activity in question or would result in an undue financial or administrative burden on the covered entity. 20   Covered entities must provide appropriate auxiliary aids and services, such as alternative formats and sign language interpreters, where necessary for effective communication.21