渋谷智子『ヤングケアラー ――介護を担う子ども・若者の現実』(中公新書)

 ヤングケアラーとは、家族にケアを要する人がいるために、家事や家族の世話などを行っている、18歳未満の子どものことである。

(p. ⅰ)

 

総務省2013年「平成二四年就業構造基本調査」

 15~29歳の介護者数として、177600人。

 同年の介護者557万3800人のうち、8割近くが50代以上。

(p. ⅲ)

 

 こうした18歳未満のヤングケアラーに関しては、まずは成長期の子どもであることを考慮し、その健やかな成長と教育の機会をしっかりと保証したうえで、介護者としての部分をサポートすることがポイントとなってくるだろう。一口に「ケアラーを支援する」と言っても、人生のどの段階でケアを担うかによって、考慮すべき点や支援方法は変わってくるのである。

(p. ⅴ)

 

 ヤングケアラーに関して、この本では18歳未満を「子ども」、18歳以上、30代くらいまでを「若者」とする。

 

 英国:「2014年子どもと家族に関する法律」第96条「ヤングケアラー」

 地方自治体は地域のヤングケアラーのニーズに関するアセスメントを行うことが義務付けられた。(p. 15)

 

 日本ケアラー連盟が「ケアラー」名称を使うこと: それによって、「これまで「高齢者」や「障がい児」のように介護を受ける人の属性ごとに縦割りに分断されていた状況を超えて、横につながろうとする方向性を持っている。日本ケアラー連盟が掲げるのは、ケアを必要とする人もケアをする人もともに尊重される社会である。

(p. 17-8)

 

・・・…「ヤングケアラー」という言葉は、「老々介護」「男性介護」に続く、新たな介護の局面を示す言葉としてメディアに注目されたのである。

(p. 19)

 

YCプロジェクト・チームの定義: 家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている、18歳未満の子ども」

(p. 24)

 

新潟県魚沼市の調査 2015年1~2月 公立小・中学校、総合支援学校26校の教職員446人対象。271人が回答(回答率60.8%)、そのうち68人が、これまでに教員としてかかわった児童生徒の中で家族のケアをしているのではないかと感じた子どもがいる、と答えた。

 

神奈川県藤沢市の調査 2016年7月 私立小中学校の教員 1098人が回答(回答率60.6%) そのうち534人が、これまでに……と答えた。

 

「ヤングケアラー」という視点を持つことにより、学校では「家族の中で子どもがどのような役割や責任を担ているのか」といった点からも子どもを見るようになり、対応の仕方が変わってきたことが報告された。

(p. 65)

 

 現状として、子どもがヤングケアラーとして自分の体験を話すと、それは、親につらい思いをさせることにつながっている。……

 なぜ、重いケアを担う子どもや若者を知った時の反応として、まわりの大人が十分にケアを担っていないのではないか、と思われがちなのだろうか。なぜ、子供を年齢相応の子どもらしくさせてあげられない責任が、周りの大人にこれほど帰されるのだろうか。この構造については、しっかり考えてみる必要がある。そうしないと、ヤングケアラーは、ますますケアの経験を語れなくなってしまうからである。自分が話したことで家族が傷つくのであれば、そうまでして話そうとは思わない。それは、多くのヤングケアラーが抱いている率直な思いである。

(p. 90)

 

 (主たる介護者の経験がない人には、理解しにくい面があるため)良かれと思って「アドバイス」してしまうのでは、と渋谷先生は推測。

 

16歳から20歳まで、足や心臓に疾患のある祖母のケアを担ったBさんの体験。(p.93~)

 高校1年の夏、祖父、父、Bさん自身がほぼ同時期に倒れる。祖父は農構想で半身不随になり、施設に。父はヘルニアのような病気。Bさんは夏バテで入院。祖父がいなければ、祖父は一人では暮らせない。 → 一人暮らしをしていた兄が自宅に戻って5人暮らしに。父は動きにくく、帰宅も遅い。とも働きの母は祖父の施設へ。祖母の世話は「家のことは女がするもの」としてBさん。

 

渋谷先生が入木素の支援現場を視察して、必要だと思う方向性

  • ヤングケアラーがケアについて安心して話せる相手と場所
  • 過程でヤングケアラーの担う作業や責任を減らしていくこと
  • ヤングケアラーについての社会の意識を高めていくこと

(p. 132)

 

英国のYCのカフェで設けられていたガイドライン

・ここで話されたことは、ここだけの話にしておくこと

・秘密を守ること。ただし、あなたや他の人の安全が心配される時には、あなたが安全でいられるよう、その情報を他の人に伝えなくてはいけないことがあります。

・自分や人のことを卑下しないこと。

・発言しないでパスすることもできます。

(p. 137)

 

英国のヤングケアラー・アセスメント・シート

  1. 150, 152, 154

 

 英国の全国ヤングケアラー連合の会長の言葉

 私が福祉専門職に対してよく問うのは、「もし、ケアを要するその人が一人暮らしだったらどうするの?」という質問。もし一人暮らしだったら、ありとあらゆるサービスをつぎ込むはず。子どもがいるというそれだけの理由で、未成年の子どもを「ケア・パッケージ」の中に入れて考えるのはおかしい。もちろん、子どもは親を愛することができるし、買い物に行ったり、部屋を掃除したりできる。けれど、入浴介助や排泄介助は子どもを当てにすることではない。(p. 157)

 

「家族」を「インフォーマルな資源」としてひとくくりにとらえがちな行政のシステムに対して、ケアを担う「家族」には、健やかな成長と教育の機会を保障されるべき子どもが含まれていること、行政はそうした子どもを「子どもの権利」という観点からも守らなければならないことが強調されている。

(p. 158)

 

 多くの場合、家族へのサポートは、福祉や教育や医療などを専門とする複数の機関の関与を意味する。ここでは、複数の支援機関の間がきちんと調整され、ヤングケアラーがリスクにさらされないよう、コミュニケーションがしっかりなされていくことが重要になる。こうした家族の状況がある程度整理されないと、いくら子どもや若者を取り出して、クラブやアクティビティやグループ・セッションでその気持ちの負担の軽減を図ったとしても、また問題が出てきてしまう。

(p. 160)

 

 学校での支援が欠かせない点について。

……多くのヤングケアラーにとって、学校は、家庭以外で一日の大部分を過ごす場になっているからである。ただでさえ不安の重い日本の小中学校の先生の仕事をこれ以上増やすのか、という懸念もあるかもしれないが、これは必ずしも先生がするというのではなく、子どもが日々通う「学校」という場所と時間を利用して、そこで、地域の人や専門家が入って、ヤングケアラーに関する知識を広めたりその支援をしたりしていくというイメージである。

(p. 166-7)

 

英国のYCが学校に望むこと トップ10  (P. 174)

 

 

 

 

 

斎藤幸平『人新世の「資本論」』

 ……政府や企業がSDGsの行動指針をいくつかなぞったところで、気候変動は止められないのだ。SDGsはアリバイ作りのようなものであり、目下の危機から目を背けされる効果しかない。

 かつて、マルクスは、資本主義の辛い現実が引き起こす苦悩を和らげる「宗教」を「大衆のアヘン」だと批判した。SDGsはまさに現代版「大衆のアヘン」である。

(p.4)

 

 急増するパーム油の生産の影響は、熱帯雨林の生態系の破壊だけではない。大規模な開発は、熱帯雨林の自然に依存してきた人々の暮らしにも破壊的な影響を与えている。例えば、熱帯雨林を農園として切り拓いた結果、土壌浸食が起き、肥料、農薬が架線に流出して、川魚が減少しているのだ。この地域の人々は、川魚からたんぱく質を摂っていたが、それができなくなり、お金が以前より必要となった。その結果、金銭を目当てに野生動物、とりわけオランウータンやトラなど絶滅危惧種の違法取引に手を染めるようになったのだ。

 このように、中核部での廉価で、便利は生活の背後には、周辺部からの労働力の搾取だけでなく、資源の収奪とそれに伴う環境負荷の押し付けが欠かせないのである。

(p. 33)

 

 環境危機という言葉を知って、私たちが免罪符的に行うことは、エコバッグを「買う」ことだろう。だが、そのエコバッグすらも、新しいデザインのものが次々と発売される。宣伝に刺激され、また次のものを買ってしまう。そして、免罪符がもたらす満足感のせいで、そのエコバッグが作られる際の遠くの地での人間や自然への暴力には、ますます無関心になる。資源が謀る(たばかる)グリーン・ウォッシュに取り込まれるとはそういうことだ。

(p. 34)

 

●デカップリング

 「経済成長」と「環境負荷」など、今まで連動して増大してきたものを、新しい技術によって切り離そうとすること。経済が成長しても環境負荷が大きくならない方法を探ること。

 

 資本主義は、コストカットのために、労働生産性を上げようとする。労働生産性が上がれば、より少ない人数で今までと同じ量の生産物を作ることができる。その場合、経済規模が同じままなら、失業者が生まれてしまう。だが、資本主義のもとでは、失業者達は生活していくことができないし、失業率が高いことを、政治家たちは嫌う。そのため、雇用を守るために、絶えず、経済規模を拡大していくよう強い圧力がかかる。こうして、生産性を上げると、経済規模を拡大せざるを得なくなる。これが「生産性の罠」である。

(p. 70)

 

 グローバル・サプライチェーンの反対側にいるのが、テスラはもちろん、マイクロソフトやアップルである。リチウムやコバルトがどのように生産されているかをそうした大企業のトップたちが知らないわけがない。実際、アメリカで人権団体による裁判も起されているのだから。にもかかわらず、涼しい顔をして、SDGsを技術革新で推進すると吹聴しているのである。

(p. 85)

 

四つの未来の選択肢

①気候ファシズム(惨事型便乗型資本主義・国家は超富裕層の利益を守り、環境弱者等を圧迫する)

②野蛮状態 無秩序な無政府状態

③気候毛沢東主義 (②を避けるために中央集権的独裁国家による気候変動への対応)

④X (脱成長型のコミュニズム(p. 2006)

 

 資本主義とは、価値増殖と資本蓄積のために、さらなる市場を絶えず開拓していくシステムである。そして、その過程では、環境への負荷を外部へと転化しながら、自然と人間からの収奪を行ってきた。この過程は、マルクスが言うように、「際限のない」運動である。利潤を増やすための経済成長をけっして止めることがないのが、資本主義の本質なのだ。

(p. 116)

 

 ……資本主義はまさに70年代、深刻なシステム危機に陥っていた。この危機を乗り越えるために、新自由主義という政策パッケージが世界的に導入されたのである。そして、新自由主義は、民営化、規制緩和、緊縮政策を推し進め、金融市場や自由貿易を拡大し、グローバル化の端緒を切り拓いた。それが、資本主義延命の唯一の方法だったのだ。

 それゆえ、「70年代の資本主義」に戻れるはずもなく、戻ったとしても、資本の自己増殖を目指す資本主義はそこに留まることができない。

(p。118)

 

 〈コモン〉は、アメリカ型新自由主義ソ連型国有化の両方に対峙する「第三の道」を切り拓く鍵だといっていい。つまり、市場原理主義のように、あらゆるものを商品化するのでもなく、かといって、ソ連社会主義のように、あらゆるものの国有化を目指すのでもない。第三の道としての〈コモン〉は、水や電力、住居、医療、教育といったものを公共財として、自分たちで民主主義的に管理することを目指す。

(p. 141)

 

……新自由主義に抗して、福祉国家に逆戻りしようとするだけでは不十分な対抗策にしかならない。高度経済成長や南北格差を前提とした福祉国家路線は、気候変動の時代にはもはや有効ではなく、自国中心主義的な気候ケインズ主義に陥るのが関の山だ。それは気候ファシズムになだれ込んでいく危険性と隣り合わせである。

 ……

 つまり、単に人々の生活をより豊かにするだけでなく、地球を持続可能な〈コモン〉として、資本の商品化から取り戻そうとする、新しい道を模索せねばならない。

(p. 146-7)

 

 人類はかつてないほどの自然支配のための技術を獲得し、惑星全体に大きな影響を及ぼしている。だが、同時に私たちはかつてないほどに、自然の力を前にして無力になっているのだ。

 このことは、環境意識の高い人であっても、同じである。自然や健康を大事に強いようとオーガニックなものを選択していても、おそらく多くの人は鮭も鶏肉も、食品売り場に並ぶ、綺麗に梱包された「商品」しか食べられないのではないか。

(p. 220)

 

●ジオエンジニアリング

地球システムそのものに介入することで、気候を操作しようとする。成層圏に硫酸エアロゾルを撒いて太陽光を遮断する、太陽光を反射する鏡を宇宙に設置するなど。

 

……経済成長と潤沢さを結びつけるのをやめ、脱成長と潤沢さのペアを真剣に考える必要がある。

…… 世の中は、経済成長のための「構造改革」が繰り返されることによって、むしろ、ますます経済格差、貧困や緊縮が溢れるようになっている、と。

……私たちは、普通、資本主義が豊かさや潤沢さをもたらしてくれると考えているが、本当は、逆なのではないか。

(P.?)

 

 〈コモン〉は、電力や水だけではない。生産手段そのものも、〈コモン〉にしていく必要がある。資本家や株主なしに、労働者たちが共同出資して、生産手段を共同所有し、共同管理する組織が「ワーカーズ・コープ(労働者協同組合)」である。

(p.261)

 

 私たちは経済成長からの恩恵を求めて、一生懸命に働きすぎた。一生懸命働くのは、資本にとって非常に都合がいい。だが、希少性を本質にする資本主義の枠内で、豊かになることを目指しても、全員が豊かになることは不可能である。

 だから、そんなシステムはやめてしまおう。そして脱成長で置き換えよう。その方法が「ラディカルな潤沢さ」を実現する脱成長コミュニズムである。そうすれば、人々の生活は経済成長に依存しなくても、より安定して豊かになる。

(p. 268)

 

  資本主義が気候変動を引き起こしているのは、これまで見てきたとおりだ。経済成長を優先した地球規模での開発と破壊が、その原因なのである。

 感染症パンデミックも構図は似ている。先進国において増え続ける需要にこたえるために、資本は自然の深くまで入り込み、森林を破壊し、大規模農場経営を行う。自然の奥深くにまで入っていけば、未知のウイルスとの接触機会が増えるだけではない。自然の複雑な生態系と異なり、人の手で切り拓かれた空間、とりわけ現代のモノカルチャーが占める空間は、ウイルスを抑え込むことができない。そして、ウイルスは変異していき、グローバル化した人と物の流れに乗って、瞬間的に世界中に広がっていく。

……

 対策についても、気候危機とコロナ禍は似たようなものになるだろう。「人命か、経済か」というジレンマに直面すると、行きすぎた対策は景気を悪くするという理由で、根本問題への取り組みは先延ばしにされる。だが、対策を遅らせるほど、より大きな経済損失を生んでしまう。もちろん人命も失われる。

(p. 278-9)

 

●「南ア食料主権運動」

バルセロナの気候非常事態宣言

 

 本書では、〈コモン〉、つまり、私的所有や国有とは異なる生産手段の水平的な共同管理こそが、コミュニズムの基礎になると唱えてきた。だが、それは、国家の力を拒絶することを意味しない。むしろ、インフラ整備や産業転換の必要性を考えれば、国家という解決手段を拒否することは愚かですらある。国家を拒否するアナーキズムは、気候危機に対処できない。だが、国家に頼りすぎることは、気候毛沢東主義に陥る危険性を孕んでいる。だからこそ、コミュニズムが唯一の選択肢なのである。

 その際、専門家や政治家たちのトップダウン型の統治形態に陥らないようにするためには、市民参画の主体性を育み、市民の意見が国家に反映されるプロセスを制度化していくことが欠かせない。

 そのためには、国家の力を前提としながらも、〈コモン〉の領域を広げていくことによって、民主主義を議会の外へ広げ、生産の次元へと拡大していく必要がある。協同組合、社会的所有や「〈市民〉営化」がその一例だ。

 同時に、議会民主主義そのものも大きく変容しなくてはならない。すでに見たように、地方自治体のレベルでは、ミュニシパリズムこそがそのような試みである。そして、国家のレベルでは、「市民議会」がもう一つのモデルとなる。

……

 意味を根本から問い直し、今、「常識」と見なされているものを転覆していく。この瞬間にこそ、既存の枠組みを超えていくような、真に「政治的なもの」が顕在化する。それこそが、「資本主義の超克」、「民主主義の刷新」、「社会の脱炭素化」という、三位一体のプロジェクトだ。経済、政治、環境のシナジー効果が増幅していくことで、社会システムの大転換を迫るのである。(p。355ー7)

 

 ワーカーズ・コープでもいい、学校ストライキでもいい、有機農業でもいい。地方自治体の議員を目指すのだっていい。環境NGOで活動するのも大切だ。仲間と市民電力を初めてもいい。もちろん今所属している企業に厳しい環境対策を求めるのも、大きな一歩となる。労働時間の短縮や生産の民主化を実現するなら、労働組合しかない。

 そのうえで、気候非常事態宣言に向けて署名活動もすべきだし、ユフウ層への負担を求める運動を展開していく必要もある。そうやって、相互扶助のネット枠を発展させ、強靭なものに鍛え上げていこう。

……冷笑主義を捨て、99%の力を見せつけてやろう。そのためには、まず3.5%が、今この瞬間から動き出すのが鍵である。その動きが、大きなうねりとなれば、資本の力は制限され、民主主義は刷新され、脱炭素社会も実現されるに違いない。

(p. 363-4)

 

 

 

 

 

『看護管理』 2021年2月号 「面会制限」が患者の意思決定にもたらした倫理的課題 コロナ禍で患者・家族を支援した看護師の経験から

『看護管理』 2021年2月号

「面会制限」が患者の意思決定にもたらした倫理的課題 コロナ禍で患者・家族を支援した看護師の経験から

 

会田薫子「高齢者が希望する最善の医療及びケアを受けるための倫理的考え方」(p. 98-102)

 日本老年医学会から「新型頃ウイルス感染症(COVID-19)流行期において高齢者が最善の医療およびケアをうけるための日本老年医学会からの提言―ACP実施のタイミングを考える」(2020年8月)

 第1波の欧米での年齢によるトリアージを、老年医学会では粘性による差別と捉え、提言を出した。

英国のNICEが65歳以上の感染者の集中治療のトリアージにClinical Frailty Scale(CFS)を推奨していることを紹介し、「CFSが示すfraility1の段階は大まかでエビデンスが藤生bんなことから、CFSだけでトリアージを行うことへの懸念を示す論文も報告されていますが、暦年齢に変わるトリアージの1つの要素として、高齢者個々のfrailtyの状態も検討していただければと考えています」(p. 100)

https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/items/kento231_05_shiryo3.pdf

 そして、最後は「より早期からのACPを」。

 

田村恵子「がん患者におけるCOVID-19による「面会制限」の影響 臨床実践と看護管理の視点から」(p.103-7)

「病院でのオンライン面会も進んではいますが、がん看護や緩和ケアに携わるナースたちはおそらく、面会制限に起因して生じた患者さんの権利が守られない状況に対して、倫理的なジレンマを感じていると思います」(p.104)

・面会制限で家族とのコミュニケーションがとりづらく、これまで家族に聞いてた本人の意向や価値観の確認ができない。

「一方で、この状況をアドバンス・ケア・プランニング(ACP)を進めるチャンスと捉えようという医師たちの声も聴きます。病状説明をしたうえで、「この先、体外式膜型人口肺(ECMO)を装着するような状況になった時には、あなたはどうしますか」ということを、積極的に聞いたほうがいいだろうという意見です。

 この話を聞いて私は、患者さんの権利が守られているとは思いませんでした。一つの選択肢について同意をとるような形で、ACPがどさくさ紛れに進められてしまうのではという違和感がありました」p.105

・緩和ケア病棟だけは終末期の面会可能とすることには、院内にダブルスタンダードができて、患者スタッフ双方から疑問が出てくること、緩和病棟での感染のリスクも考えると悩ましい。

・「ジレンマを感じる」という看護師のとらえ方に対する疑問。

「私たちが感じたジレンマの向こう側にあるのは、患者さんの権利が守られていないという事実です。医療者がジレンマと感じるかどうかにかかわらず、患者さんにはそれぞれ人権があるという認識が薄いのではないか」

「…真に患者さんの側に立った時に見えるのは人権なんですよね。「看護師のジレンマ」という切り口や論点を変えないといけないと思っています。

 患者さんには、COVID―19の中でもがんの治療を受ける権利もあれば、感染が怖いからがんの治療を休む権利もあると思うのです。それを「受けられる治療があるのに、受けてくれないのはジレンマだわ」と捉えてしまうのは、看護という立ち位置による思い入れに過ぎないようにも思うのです」(p. 107)

 

山岸暁美「リスク共生・リスク選択時代の意思決定支援―新型コロナウイルス感染症がもたらした変化と地域からの懸念」(p.118-11)

・面会制限によって、人生の最終段階において、家族と共に過ごしたいと望んでの退院・地域療養意向が増えた。がん患者の在宅療養移行が多くなったとも聞く。

・これまでの「大病院なら安心」が揺らいで、感染リスクや面会できないリスクを伴うことになった。「リスク共生・リスク選択の時代」だ。

「個別の患者・利用者には、どこまでが「起こっても仕方ない」と思える範囲なのか、また、どこでどのような生き方を望むのかの丁寧な共同意思決定やACPが求められている」(109)

・しかし、実際にはCOVID-19では、人工呼吸器とECMO装着についてADをとることのみが重視されており、「コロナ禍においては、もしもの時のために不十分な状況設定と情が中で患者が発した意向が、患者にとっての最善の利益となる診療/ケア方針を選択するための根拠ではなく、限られた医療資源の使用をなるべく控えるための体のいい言い訳として利用される恐れがある」(p. 110)

「意思決定支援をして、またACPを積み重ねて終わりでは決してない。このプロセスは継続しつつも、その意向や思いをかなえるための医療やケアの提供とセットで考えるべきだ」

「医療やケアの専門職のかかわりによって、選択の幅は広くもなれば狭くもなることを我々はもっと認識しなくてはならない。……患者・家族に提示する選択肢を増やすことにも合わせて取り組んでこそ、新尾西決定支援であることを再認識する必要がある」(p. 110)

 

参考:https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/blog/bito/202011/567813.html

 

藤田愛「「会えない」状況を踏まえた本人・家族への意思決定支援の変化 病院看護師と訪問看護師への調査を通じた面会制限による影響の考察」

・①勤務先の訪問看護・リハビリセンターの訪問看護師11名への質問紙調査で、「人生に関わる意思決定支援」への影響の有無と具体的場面の概観。②病院看護師との座談会

「会えない」影響として、

  • 家族にも会えない、同室者とも話せない、ベッドで過ごすことが多くなり、せん妄、廃用性症候群、感染症。それらにより施設入所が困難となるなど転院先の選択が狭まる。
  • 家族が医師から説明を受けていても、本人と会っていないので、本人の状態を完全に把握することができず、退院後にショックを受けたり、落胆する。「なんでこんな状態に」とトラブルになることも。
  • 家族とのつながりを作りたいスタッフと感染リスクを案じる管理職の溝。認識の差。病棟看護師がリモート面会導入の声を上げ、師長から上層部に打診すると「情報管理について考えてない」と非難された事例。「患者が不利益な状態に置かれていることへの看護師の苦悩と、組織としての情報管理との間で、価値の対立が起きている」(p. 114)
  • 面会できないまま過ごさざるを得ない患者と家族。思慕に、面会制限に対する病院への不満、患者の変化に気づけなかった自責の念。
  • 入院したら家族と会えないことを前提に治療を選択するので、予定していた入院や施設入所をためらうケースが増加。受診や入院を迷っているうちに症状が悪化する人も。緩和ケア病棟入院をやめて、在宅看取りを選択する人が増えている。
  • 離れて暮らす親族の支援が受けられない中で、介護を抱えている家族も
  • 終末期の患者さんに限って短時間一人ずつの面会は許可している病院。
  • 管理職が主治医と話をして面会許可を出せるか検討している病院も。
  • 「C-19が長期間収束しないことによりスタッフにも影響が出てきている。もともとは、家族が来れば一緒に処置やケアを行っていたが、最近はスタッフ自身のペースで動くことが増えたように感じ、懸念している」(p. 115)
  • 退院前カンファレンス、退院調整会議が激減し、退院調整が不十分なままの退院による再入院の事例や、在宅療養を支える多職種の準備が間に合わないケースも。岩本大希(ウィル訪問看護ステーション江戸川)「それらは患者・利用者の不利益に少なからずつながっていると現場にいる私たちは思う」(p. 133)
  • 「家族も本人もわけがわからない中で病院医療者が敷いたレールの上で医療が進んでいく可能性もある」(p. 115)
  • 認知症の人でせん妄が悪化。認知症も重度化。
  • 小児科での付き添い家族(多くは母親)が、交代も外出もできないで疲弊。子どもも機嫌が悪い。
  • 発達障害の患者は自傷行為が増えた。
  • 家族に会えないことで闘病の気力を失い、透析を拒否して亡くなった事例も。
  • 第1波で面会禁止にしたところ弊害事象が続いたので、看護部でヒアリングした結果をもって病院長と交渉、一定の条件を付けて15分の面会が可能に。ただ、条件から外れた患者からクレームが出ることも。
  • COVID病床もなく自治体内の感染も少ないので、5分以内であれば回数の制限なく面会が可能。主治医の判断により5分の制限なく許可されるケースも。
  • こうした状況に看護師も不全感や無力感を感じつつけて、看護師の健康への影響も。
  • 「特に、「家に帰りたい」と望む人生哀愁段階の方については、長期には無理でも一度だけでも家に帰れることを目標に、挑戦していただきたいと願う」(p.118)

 

実践報告8本

聖マリアンナ医科大学

対面面会後にDNARに同意した家族。20歳男性。急性骨髄性白血病に化学療法を行い、家族からの骨髄移植が予定されていたが、治療途中に敗血症性ショックでICU管理に。その後、改善し、移植は行われたが、2週間後に多臓器不全で終末期となる。本人はICU入試s辻に「あらゆる治療を行っても回復を希望する」と意思表明し、意思表示ができなくなったら家族に代理決定をゆだねることに同意。

詳細な病状の説明だけでは、これ以上の治療が無益であることが家族に伝わり切れず、「できることをしたい」「そばにいたい」という強い思いがありながら、かなわない苦しさを訴えた。医療職側にもそれができないやりきれなさがあった。医師や看護師の管理者同士で話し合いが繰り返され、家族の体調が万全であり三密を回避することを条件に、感染防護具を装着したうえで対面での面会を可能にした。

本人の状態をつぶさに見、言葉をかけて、面会後、蘇生は望まない、と。「対面して、頑張ってきた姿を直接感じることができた。いろいろな治療や機械につながれても厳しいということ状況に限界も感じた。容姿も変わり本人らしさをこれ以上失ってほしくない」。家族が見守る中、永眠。「最後はみんなで過ごせてよかった。頑張った本人を誇りに思っています」と父。(p. 121)

谷田由紀子(関西医科大学総合医療センター看護部長)

「看取りが近い段階となった場合、医師と病棟管理者で話し合い、面会者の人数・時間・体調を確認し個室内で面会を許可している。しかし、今回のように急な看取りになると「会いたい」という家族の思いは支えられない。また、重要な意思決定の場面においても、面会ができないことで患者と家族の間で思うように会話ができず、本心を語り合えていないように感じる。

 そのため、患者の病状把握を行い、面会が必要なタイミングを適切にとらえる必要がある。その上で、面会が必要な患者に対しては、感染予防琢策を万全にした上で、面会制限を部分的に解除することが必要である」(p. 128)

 

My Health , My Life Barriers to healthcare for people with a learning disability during the pandemic

My Health , My Life

Barriers to healthcare for people with a learning disability during the pandemic

 

https://www.mencap.org.uk/sites/default/files/2020-12/MyHealthMyLife_COVID%20report.pdf

 

2020年1月のデータによれば、

知的障害のある人がC-19によって死ぬ確率は一般人口の3~4倍。

年齢や性別ごとの比較では6倍に達する可能性も。

黒人、アジア系、エスニックマイノリティの知的障害のある人ではとりわけ影響が大きい。

 

2019年のLeDeR(Learning Disability Mortality Review)

死亡時の年齢 男性では一般と22年の差 女性では27年の差

(LeDeRは、メンキャップの『無関心による死』報告書、それを受けた英国保健省の調査(2010~13)を受けて、15年に開始された調査制度。(『殺させられる親』p. 166))

 

3年前からのTreat Me Well キャンペーンでは、医療専門職の研修、医療現場での合理的配慮、各現場ごとに問題に取り組む人のエンパワメント。

 

研修プログラムとしては、 Paula McGowan’sキャンペーン(研修の義務付け? 16年に亡くなった男児の親による)、The Oliver McGowan Mandatory Training in Learning Disability and Autism. 現在トライアル中。

https://www.hee.nhs.uk/our-work/learning-disability/oliver-mcgowan-mandatory-training-learning-disability-autism

 

NHS10年計画にも、知的障害のある人の医療の改善standardとnew flagging systemが盛り込まれたが、完全実施には何年もかかる見込み。

https://www.longtermplan.nhs.uk/online-version/chapter-3-further-progress-on-care-quality-and-outcomes/a-strong-start-in-life-for-children-and-young-people/learning-disability-and-autism/

2020年のデータに見られたC-19の影響

5月 LeDeR報告書に懸念表記

6月 CQC報告書 パンデミックの最盛期には障害のある死者数が134%の増加。

9月 ONS(the Office for National Statistics)のデータで、2020年7月までの期間でC-19に関連する死者の60%が障害のある人。

 

これらのデータが明らかにしているのは、C-19パンデミックにおける知的障害のある人の医療についてガイドラインが不明確、一貫性を書き、時に法に適っておらず、全国150万人の知的障害者を深刻なリスクにさらしているという事実。

 

「こうした調査とデータが多々そろっているにもかかわらず、知的障害のある人は医療への受け入れがたい障壁のために命を落とし続けている。今すぐにこの問題に対処するべく早急な行動が求められる。本報告書は、長年続いているこうした医療格差に対処するために何が必要か、勧告するものである」

 

救急搬送用要請時の問題

知的障害のある人の多くでは、コミュニケーション、必要な医療情報の適切な伝達のために当人をよく知っている人が付き添うことが不可欠であるにもかかわらず、C-19パンデミックでは救急車での付き添いが認められるのは子どものみ。本人の不安や不穏を増大させる。

ガイドラインでは「non-essentialな人(観察者、家族など)」と表現されているが、その区別は明確に定義されておらず、個々の医療職に委ねられている。

 

メンキャップは独自に、急性期病院で働いている、あるいは地域ベースで働いている知的障害看護師239人に調査(2020年6月17日~7月1日)。

回答者の4人に1人が、知的障害のある人が入院した場合に病棟に家族も支援者も付き添いを認められない事例を目撃。一人は、救急車に載せられる際に、付き添いばかりか一切の書類(病院パスポート、薬の一覧)も受け取りを拒否された事例を目撃。

 

病院パスポート

https://www.royalfree.nhs.uk/patients-visitors/disabled-facilities/patients-with-a-learning-disability/hospital-passport/

 

安全確保のために面会制限がされているが、症状を自分で訴えたり、必要な情報を自分で伝えることが難しい知的障害者の場合、PPEや以前と違う手順等が本人には理解できにくく不安につながることもあって、介入の失敗は本人の苦しみや、いのちにも関わりかねない。柔軟な対応が求められる。実際に面会制限のために治療アウトカムが悪くなった事例をメンキャップはいくつか目撃。

「医療現場において知的障害のある人に付き添いを認めることは、とりわけ病院においては、命に係わるほど重要な合理的配慮である」

 

NHSのガイダンス(3月25日)面会禁止に3つの例外を認めたが、知益障害は含まれなかった。

4月9日の改訂版では、知的and /or発達障害のある人たちのdistress回避のための例外が認められた。

5月の改定では、さらに身障者も含め、患者のニーズを支援するために必要な場合は付き添いが認められた。

しかし、現場に徹底されておらず、現場の意識によりばらつきがある。

さらに10月13日の改定には、障害者への合理的配慮について記載がなく懸念されるが、報告書観光段階では変更されていない。

 

Peterの体験

19年12月から20年8月までに水頭症の手術で入退院くりかえす。12月には家族の付き添いが認められて安心した療養できたが、6月の入院当初数週間は面会が全く認められず、困難。受けられる治療の質にも影響してくる。最後には1日1時間家族の一人の面会が認められて、helpful, comforting, and reassuringだったが、もっとあってほしかった。

 

「知的障害のある人たちには、自分の状態や自分が受けている治療について、理解するのも質問するのもむずかしいのだということを病院スタッフに、しっかり分かってもらう必要があります。同様に、知的障害のある人の中には、付き添いなしに一人にされると、苦痛があったりその他の異変を感じていても、スタッフに伝えにくい人もあります」

知的障害者への集中治療差し控えを勧めたフレイル基準のガイドライン

第1波でNICEから出された救急医療のガイドラインは、Clinical Frailty Scaleにより患者を選別するもの。日常動作の自立度を測るため、それらの行為に支援を必要とする知的障害者は治療を受けられなくなる可能性があるとメンキャップは即座に抗議。4月の改定により、65歳未満の患者と年齢を問わず固定した長期障害のある患者、知的/発達障害のある患者には用いてはならないことが明記された。しかし、当初ガイドラインの影響は続いている。また、まったく健康な知的障害者にGPからC-19感染時には蘇生を望むか、病院へ行くか、治療を望むか、慎重に考えておくようにとの手紙が届いた、とも聞いている。

 

DNARCPR

回答者の自由記述「DNARCPRは知的障害のある人にはコンスタントに出されていて、多くの場合それも不適切に出されています。……日々、抵抗していますが、それでもまだ起こっています」

回答者の54%が知的障害のある中等度あるいは高リスクの患者が不適切なDNARCPRを出されている、と語っている。

 

「この結果は、知的障害のある多くの人が医療システムにおいて直面している差別をくっきりと描き出している。これらの指示はいのちを救える治療を知的障害を理由に拒否するものとなり、法に沿わない差別の行為である。メンキャップはこの慣行に抗議し、NICEはガイドラインを改善、NHSも全てのトラスト、CCG, GPに宛ててこの問題に対応し、グッドプラクティスを求める書簡を送った」

しかし、改訂の不明瞭傘から当初の差別的なガイドラインの影響が続いている。「パンデミックの最悪期にNHSを守り病院のひっ迫を避けたいdriveが、ガイドラインの不適切な適用や差別的な対応に繋がっている」

知的障害のある人の多くが、知らないうちにカルテにDNARPCRをかかれている能性があり、メンキャップにはそうした事例の報告が今なお届いている。CQCのパンデミックでの

DNARCPRの使用に関する中間報告では、知的障害者、家族、ケア提供者からの懸念が強調されている。

 

Stevenの体験

ダウン症。43歳。GHで生活。3月にC-19感染し、救急搬送。改善したところで再度悪化し、別の病院に入院。二度目の入院2日後に父親に℡「必要となっても人工呼吸器はつけない」と医師から決定事項として告げられた。理由は血管炎の持病で免疫に影響の出る治療中のため。父親が最初の病院の血管炎の主治医に相談。この医師の介入により、必要となれば呼吸器をつけることに。2週間後、退院。

 

ケイティの体験

メンキャップのスタッフ? 3月にメンキャップが支援している人たちからGPからの手紙が届いたと連絡が届き始めた。年齢、健康状態、障害を問わず、ケアを受けている人全員に一律に出されたもの。階段を上がれるか、などの質問。GPの委員が謝罪したことで問題は解決したが、そもそもこういうことが起こったこと自体が懸念材料。

 

病院での体験

The Equality Act 2010で合理的配慮の必要が謳われている。

https://www.equalityhumanrights.com/en/equality-act-2010/what-equality-act

 

2013年の保健省の調査CIPOLDレポートで、合理的配慮の欠落が多くの死につながったことが指摘されている。

https://www.bristol.ac.uk/cipold/news/2013/19.html

 

2019年のLeDeRレポートでは、知的障害のある人は治療可能な病気で死ぬ確率が一般よりも4倍高いことが報告されている。

 

このようにC-19感染拡大以前からの状況を鑑みればパンデミックでの同様のリスクはあなどれない。

 

が、メンキャップの調査では、多くの看護師がパンデミック知的障害者がうけるケアに批判的だった。あるナースは「残念ながら、病院で私が目撃した支援は、基本的な看護ケアという点ですら十分なものではありません」。常に合理的配慮を見ると答えたナースは5人に1人。

「合理的配慮のための時間を割くことは優先順位が低い」「急性期医療の現場に、もっと多くの知的障がいナースがいればNHSのためになるのに」

 

なにが「合理的配慮」かに決まった定義はない。しかし、合理的配慮のためには感染予防の厳格な方針の変更が必要となることもある。たとえば、多職種協働など。「配慮の中にはパンデミック下では「合理的」と見なされなくなるものもあるが、全ての人の安全を確保するためには、手続きを一定程度変更することが不可欠である。24時間介護やコミュニケーションに支援が必要な人に合理的配慮を行わないなら、診断や治療のアウトカムを損なうリスクが上がる」

 

またパンデミックに伴う職員の配置換えにより知的障がいナースが異動し、サービスが受けられない事態も発生している。急性期病院では11%の回答者がチーム内で異動があったと回答。地域で働く回答者では34%。

 

回答者の多くが、レスパイトと地域でのサービスの削減が患者と家族を支援のない状態に陥らせて、心身の健康を損ない、中には危機的状態も起きている、と述べた。

 

コミュニケーションとPPE
コミュニケーションの問題がパンデミックでより深刻に。マスク等の防護具で口や表情が見えない。柔軟な、その人に会わせた工夫が必要。例えば、テディベアを持ってきて、マスクをつけて見せる。防護具を着るとナースがどのように見えるか物語で伝えるなど。家族とのつながり保つためにはタブレットスカイプなどを活用。知的障がいリエゾンナースの役割は大きい。

「急性期病院内では知的障害リエゾン看護師が、病院にくる患者のために支援とコミュニケーションを提供しています。患者のそばに付き添い、個々のニーズを説明してスタッフを安心させます」

 

合理的配慮がないために起こること

4月から6月に知的障害者の82%が病院で死亡。一般には63%。入院後のケアに問題があるのは直近のLeDeRレポートも指摘。

Treat Me Well キャンぺーンで指摘してきたのは、適切なコミュニケーション、研修、インクルーシブな態度なしには知的障害者は適切なケアを受けられないし、時には命にかかわることにもなりかねない。

 

2020年11月のLeDeRレポート。知的障害者の死の21%で、合理的配慮の必要が示されていたが、それに対応する配慮が行われていなかった。コロナ以外で死んだ人ではそれ以外の死因の人よりもそういう事例が多かった。

「コロナで死んだ人に行われなかった合理的配慮として、もっとも多く報告されたのは、病院での専門的な知的障がいサービスの提供;個々のニーズに応じたケア提供の工夫、不慣れな環境で本人をよく知っている人から支援を受けられることの保証。

 

合理的配慮が常にstandardな対応として行われていたと回答したのは19%。

 

ロイさんと娘の体験

知的障害があり、目が見えない49歳の娘。17年には臓器移植を受け、免疫抑制剤を飲んでいる。病院により、対応が全く違う体験。

 

不適切な退院

57%が、知的障害のある患者の退院時に、適切な支援を整えるための時間を十分にとっていない、と回答。ベッドを空けるために早期退院の方針が3月に出されたが、知的障害者の場合、臨床的には退院可能であっても、退院後の支援をすぐに組み立てられるわけではなく、退院が決まったら数時間で退院というような事例もあり、本人の健康リスクとともに、福祉の現場にも受け入れ準備が不十分になれば安全確保の面で懸念が大きい。9月改定の退院ガイドラインでも、障害者への配慮は盛り込まれていない。

 

リロイの体験

58歳。知的障がい。3月半ばにコロナ感染。まだ歩くのにも不自由し、息切れしているのに、退院させられ、結局数日後に再入院となった。

 

リモート診察

Overshadowingのリスク。非言語コミュニケーションや、しぐさ、姿勢、ちょっとした行動の変化など、対面なら症状を伝えるヒントになるものがリモートでは伝わらない。それが命取りになることも。例えば、便秘の合併症による入院事例が急増している。

NHSの長期計画で対面診察の3分の1をリモートに。テレサービスも同様。毎年の健康診断を先延ばしにする人も。知的障害者の中には金銭的な理由、技術的な理由でアクセスできない人も。安全性についてエビデンスも必要。もし、リモートをstandardにするなら、知的障害者は例外にすべき。

 

ブラドリーの体験

27歳。知的障がい。重度のてんかん脳性麻痺自閉症。その他の複雑な病気など。

てんかんのため、頻繁に入院。3月から15回。合理的配慮であるはずの付き添いが認められず、問題行動。職員は「なんでどうにかできないの?」と母に。研修を受けたナースはほとんどいないし、支援する時間もない。

母は一方的DNARに抗うために、ACPを書いた。

 

今後に向けた提言

「国家的危機の中、資源がひっ迫していても、知的障害のある人たちの基本的人権は他のすべての人と同様に守られなければなりません」

 

より明確なガイドライン

C-19禍の医療に関するガイドラインの主要部の中に、知的障害のある人のニーズへの対応が明記される必要がある。全国のベスト・プラクティスが紹介されるべき。

救急搬送のガイドラインも、知的障害のある人には病院までケアラーとアドボケイトが付き添えると、より明確に示すべき。

DNARCPRは、調査し、ICのない患者や適切な意思決定を経ていない人についてはカルテから削除しなければならない。

 

合理的配慮

合理的配慮はEquality Act 2010で法的に求められているだけでなく、知的障害のある人にとっては命に係わるほどに大切。何が「合理的」かは許容できる範囲によって異なるにせよ、配慮は検討し、可能なところでなされる必要がある。命にかかわりかねないのだから。

政府と国の保健機関は、C-19下での具体的な合理的配慮の事例を使って、より明確な通知を出すべき。

 

リモート診察

知的障害者はもちろん、高齢者など様々な要因で医療へのアクセスが阻まれかねない人たちへの影響を早急に調査すべき。

 

死亡事例の調査を

なぜ知的障害のある人たちがこんなにも多く亡くなっているのか、理由を知るための行動を起こし、将来繰り返されないよう予防すべき。

 

研修

この数か月ではっきりみえてきたのは、医療には文化的変容が求められていること。危機に際して知的障害のある人たちに医療がどういう目を向けているか、それを変えなければならない。犠牲になっても仕方がない人でも、(知的障害者だから)みんな同じでも、「余計な手間がかかる」人とみなすべきではない。医療現場では最も助けを必要としている、価値ある大切な人間なのだから。

そのためには、すべての医療専門職が自分の専門領域において自信をもって、知的障害のある人に柔軟で一人一人にあったケアを提供できるべく、研修が優先されるべきである。英国では、Oliver McGowan、Paul Ridd の名前を関した義務研究プログラムがある。

 

ワクチン

知的障害者は一般よりも死亡率が6倍も高い調査結果があることにかんがみ、ワクチンは優先的に打つべき。

 

 

精神障害者と知的障害者にワクチン優先接種 死亡率が高い理由にちょっと疑問

news.yahoo.co.jp

以下のメンキャップの報告書を見ると、

英国の政府機関の統計から知的障害者のコロナでの死亡率は一般の3~4倍。

属性の絞り方によっては6倍にもなる。

 

https://www.mencap.org.uk/sites/default/files/2020-12/MyHealthMyLife_COVID%20report.pdf

 

が、その理由は、本人にあるのではなく、

医療機関の知的障害への無知・無理解、対応の不備にある、とされている。

 

日本ではそのあたりへの考慮なしに、

まるで知的障害や精神障害そのものが死亡リスクであるかのように

捉えられているんだろうか。気になる。

奥野修二『心にナイフをしのばせて』(文春文庫)

 

 

https://www.amazon.co.jp/%E5%BF%83%E3%81%AB%E3%83%8A%E3%82%A4%E3%83%95%E3%82%92%E3%81%97%E3%81%AE%E3%81%B0%E3%81%9B%E3%81%A6-%E6%96%87%E6%98%A5%E6%96%87%E5%BA%AB-%E5%A5%A5%E9%87%8E-%E4%BF%AE%E5%8F%B8/dp/4167753677

「社会」と「世間」

「息苦しさの背景に気づこう」

日本世間学会幹事・評論家 佐藤直樹

 

中国新聞2021年1月6日「オピニオン」欄「コロナと同調圧力

 

 私たちは「世間様に顔向けができない」といった言葉をよく使いますね。山上憶良も「貧窮問答歌」で〈世間(よのなか)〉を使っています。千年前から存在する言葉ですが、英訳できません。英語圏には「世間」が存在しないからです。それに対し「社会」は明治期に西洋から輸入された概念の造語です。社会は法のルールに従うことで成り立つ自立した個人の集合体。一方、世間には個人が存在しません。

 

――日本には「社会」と「世間」があるのでしょうか。

 日本は科学技術や法制度を輸入して近代化を果たしたものの、「社会」の輸入はうまくいかず、「世間」が温存されました。そのため建前としての社会があり、そのう上位に本音としての世間がある。そんな二重構造が出来上がりました。