2022-01-01から1年間の記事一覧

吉田修一『パレード』

各章で順番に語られる物語の登場人物は、同じシェアハウスで暮らす若者たち5人。 いつだったか、「ここでの暮らしって、私にとってはインターネット上でチャットしているようなもんなのよ」と、琴が言ったことがある。その時は、また訳の分からないことを言…

Dumsday "ASSISTED SUICIDE IN CANADA"  Chapter 7 Freedom of Conscience for Health-Care Providers

In Carter v Canada, the Supreme Court of Canada specified that physicians who objected to MAID on moral and/or religious grounds could not be compelled to participate in it directly. However, it left open the quesion of whether they might …

村上靖彦『「ヤングケアラー」とは誰か』(朝日新聞出版)

私が「ヤングケアラー」という単語を振ったとき、Eさんは「家を出ようかなと思ってます」と自立について語った。通訳役割のなかで自分が消えることへの抵抗としての自立が語られたのだ。 ろう家族のなかでEさんだけが聴こえるがゆえに、通訳以外の介護にまつ…

永井玲衣『水中の哲学者たち』(晶文社)

手のひらサイズの哲学 対話というのはおそろしい行為だ。他者に何かを伝えようとすることは、離れた相手のところまで勢いをつけて跳ぶようなものだ。たっぷりと助走をつけて、勢いよくジャンプしないと相手には届かない。あなたとわたしの間には、大きくて深…

坂上香『プリズン・サークル』(岩波書店 2022)

コミュニティの力を使って問題からの回復を促し、人間的な成長を実現しようとするこうしたアプローチは「回復共同体(Therapeutic Community: TC)と呼ばれ、欧米を中心として世界のあちこちで実践されている。ただし、運営組織や制度によって理念、対象者、…

ヘレン・ルイス 田中恵美香訳 「むずかしい女性が変えてきた あたらしいフェミニズム史」(みすず書房)

……フェミニズムの歴史を考えるとき、運動の先駆者たちが大きな過ちを犯しているからといって、そうした引っかかる点をその人物からそぎ落したり、すっかりなかったことにしてはいけない。人間として、男性と同じように欠点もあると認めたほうがよい。メアリ…

安藤量子『海を撃つ 福島・広島・ベラルーシから』(みすず書房 2019)

1976年広島生まれ。結婚後、植木屋を営む夫と移り住んだ福島県いわき市で震災と原発事故を体験。放射線の勉強会や照射線量の測定を続けるうち、国際放射線防護委員会(ICRP)の声明と出会い、地元有志と活動を始め、チェルノブイリの原発事故を経験したベラ…

坂田和夫 基調講演 指定発言 「家族の立場からコロナ禍における面会の制限」 日本重症心身障害学会誌第47巻1号 25~28(2022)

Ⅰ. はじめに (略) 私たち重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))のいる家族は子どもを授かり、物言わぬ子どもに問いかけ、子どもの笑顔で癒やされ、励まされ、健気に生きている姿を見ながら自らの人生をも振り返り、大切な我が子が一生豊かで幸せな人…

鈴木由美 基調講演 指定発言「重症心身障害病棟のコロナ禍における面会の実態と今後の展望(国立重症心身協議会参加施設調査より)」 日本重症心身障害学会誌第47巻1号 19~23(2022)

全国の重症児(者)病棟をもつ国立病院機構病院及び国立センター病院(全76施設)を対象 2021年10月から11月 既存の国立病院機構の病院間ネットワークを利用し、電子メールおよび国立病院機構のインターネットセキュリティ内のMS Teams 機能に含まれるForms…

児玉和夫 基調講演「新型コロナ感染下における重症心身障害施設」 日本重症心身障害学会誌第47巻1号 13~17(2022)

公益社団法人日本重症心身障害福祉協会(構成員は104の法人及び団体。2021年4月1日時点で施設数135、病棟数323、入所定員の総数は13,831人)によるアンケート調査。 2020年4月から2021年10月までの間に4回のアンケートとワクチンの接種状況について1回の緊急…

川口有美子 新城拓也 『不安の時代にケアを叫ぶ ポスト・コロナ時代の医療と介護に向けて』(青土社)

以下、ゴチックはspitzibara コロナ禍での面会制限・医療についての箇所 新城 今COVID-19の影響で家族が病室にいない。それでびっくりするほどいろんなことがどんどん決まっていきます。 …… 新城 本人の苦痛緩和優先で、病院では家族がどう感じているかなど…

幸田文『生きかた指南』(平凡社)

「重い母」 お母さんが重くて困る、ということをこの秋2度ほど続けて聞いた。 …… 濃すぎる愛情を、思いという表現で言われたのが「いまは、軽さのよさ、の時代だ」と有難がっている私に、強くひびいた。 私が有難がっているのは、身のまわりの道具類がいまは…

伊藤昌亮『炎上社会を考える 自粛警察からキャンセルカルチャーまで』中公新書ラクレ

……したがってそれ(spitzibara注:新自由主義)は、経済政策としての考え方よりも、むしろ社会規範としての振る舞い方を意味するものだ。そこでは評価のための競争が絶えず繰り広げられ、監視のもとでの制裁が絶えず繰り出されることになる。 実はそうした一…

New Federal Guidance for Healthcare Providers on Civil Rights Protections for Individuals with Disabilities During the COVID-19 Public Health Emergency

Phychogeriatrics誌のコメンタリーで触れられていたガイダンスに関する記事を読んでみた。 2022年3月4日の記事 seed.csg.org 米各州がパンデミックにおける医療ひっ迫の際の医療資源分配をめぐってガイドラインについては、2020年にいくつかの州で障害者を違…

Dying patients living longer than expected lose NHS funds (BBC News,

Fast Track パスウェイとは、悪化の進行が早くて終末期が見込まれる病状の患者さんを見極めて、簡単な手続きで迅速に在宅医療につなげるアセスメント・ツールらしいのだけど、 www.datadictionary.nhs.uk ところが、これがまた、本来の趣旨から外れて、切り…

International Phychogeriatrcis(2020) Commentary: Advocacy for the human rights of older people in the COVID pandemic and beyond: a cll to mental health professionals

Advocacy for the human rights of older people in the COVID pandemic and beyond: a call to mental health professionals - PMC 著者はCarmelle Peisah(豪), Andrew Byrnes(豪), Israel (Issi) Doron(イスラエル), Michael Dark(米) and Gerard …

災害関連介護殺人事件 

www.asahi.com 山川徹『ドキュメント災害関連死 最後の声』(角川書店 2022) 終章「救われる命」 小見出し「災害関連殺人」(p. 304-307) ●著者は夫の国選弁護人だった鹿瀬島正剛から話を聞いて、書いている。 鹿瀬島は、熊本地震ののちに熊本弁護士会が…

有薗真代『ハンセン病療養所を生きる 隔離壁を砦に』(世界思想社 2017)

ハンセン病療法所に隔離された人々は、みずからに強いられたきわめて厳しい生存条件のなかから、いかにして多種多様な集団的実践を編みだし、肯定的で開放的な諸条件をつくりあげていったのか。本書では、かれらがみずからの置かれた歴史的、社会的条件とわ…

オーストリア 医師幇助自殺合法化要件

2022年1月1日から施行 those over the age of 18 who are suffering from “incurable, fatal illness” or a serious permanent illness with debilitating effects that “cannot otherwise be averted” have the right to apply for assisted suicide, which…

吉田修一『静かな爆弾』(中公文庫)

座ったまま待っていると、響子は書き終えたメモ帳をテーブルに置いた。 「ごめんなさい。ここで一緒に暮らす自信ない。暮らしたくないわけじゃないけど、今はまだ、帰る場所があるから、ここにいられるような気がする。私にとって、ここが帰る場所に変わるま…