2020-01-01から1年間の記事一覧

『ともに悲嘆を生きる グリーフケアの歴史と文化』島薗進

……大切な人が亡くなったことについて、自らに責任があるように感じてしまうことは少なくない。そこには自分が愛する人に対してもっていた疎ましい思いの自覚も含まれている。愛の対象に対して、同時に憎しみや敵意がこもっているという洞察は「アンビヴァレ…

『障害者とともに働く』藤井克徳・星川安之【岩波ジュニア新書】

ILOに関わって、もう一点あげておきたいことがあります。それは、「ディーセント・ワーク」(尊厳のある労働、あるいは人間らしい労働)です。提唱された1999年当時と併せみれば、そこに深い意味を読み取ることができます。地球規模での経済成長一辺倒の様相…

カナダMAID対象者要件緩和法案 Bill C-7

www.thestar.com Bill C-7 introduces a critical departure from the original legislation, including an elimination of the 10-day waiting period between approval and lethal injection, removing the provision of a “reasonably foreseeable” death…

オランダとベルギーの安楽死後肝臓提供に関する論文メモ

Evaluation of Liver Graft Donation After Euthanasia Marjolein van Reeve, et.al. JAMA Surg. 2020;155(10):917-924. https://jamanetwork.com/journals/jamasurgery/article-abstract/2769118 だいぶ前に存在を知って、ずっと読みたかった論文をありがた…

伊藤亜紗『記憶する体』 

伊藤亜紗『記憶する体』 春秋社 2019年 「『右手がなくなって大変だ』と思っている人に、『我々はもとからないで』と言うのも、なんか驕っているかんじがしますしね(笑)。なくなった痛みを知っているわけではないので、慰めになっていない気がするんで、あ…

伊藤亜紗『見えない人は世界をどう見ているのか』(光文社新書)

……視覚をさえぎれば見えない人の体を体験できる、というのは大きな誤解です。それは単なる引き算ではありません。見えないことと目をつぶることとは全く違うのです。 見える人が目をつぶることと、そもそも見えないことはどう違うのか。見える人が目をつぶる…

ケアラー・オーストラリアが「終末期ケアの研究にケアラー視点を」

www.miragenews.com ずっと「死ぬ権利」の周辺の議論を追いかけてきて、 そこに「家族」への視点がほとんど欠落していることに 疑問を感じている。 家族ケアラーの視点からこの問題を考えてみる必要があるのでは、 ということを最近考えている。

河合隼雄 小川洋子『生きるとは、自分の物語をつくること』

河合隼雄 小川洋子『生きるとは、自分の物語をつくること』(新潮社 2008) 小川:…… 人は、生きていくうえで難しい現実をどうやって受け入れていくかということに直面した時に、それをありのままの形では到底受け入れがたいので、自分の心の形に合うように…

NZの国民投票(9月)で問われる the End of Life Choice Act 2019 安楽死と自殺幇助の両方をassisted dying

https://www.referendums.govt.nz/endoflifechoice/faq.html 法文は 薬物を医師またはナースプラクティショナーがgive、患者は recieveで通されているが、投票前のQ&Aには以下の下りがあり、経口、経管のいずれも、自力で、または医師またはナースプラクティ…

浅田次郎『流人道中記 下』

内蔵助の腕前などは知らないが、体格や所作から察するに、さほどの達者とは思えない。一方の伝八郎は僧形とは言え、筋骨たくましく眼光も炯々として、ひとたび刀を執ればいかにも遣い手と思える。よってこの際は、伝八郎が内蔵助を斬り、なおかつ僕が伝八郎…

9月のNZ国民投票 安楽死法案要件

Under the legislation, there are strict conditions – all of which must be met. They are: Be 18 years of age or older. Be a citizen or permanent resident of NZ. Suffer from a terminal illness that is likely to end their life within six mont…

ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

6. プールサイドのあちら側とこちら側 プールサイドのこちら側では、水着姿の中学生たちが肩をこすり合うようにして身体をすぼめて立っていた。人間がすずなりになっている様子を、英語で「缶詰のイワシのような」と表現するが、まさにその絵を思い浮かべて…

西オーストラリア州 安楽死法詳細

議会通過は19年12月 施行は20年6月 一般には耐え難い苦痛を引き起こす余命6か月の病気。 進行性の神経系の病気や障害の場合には余命12か月。 口頭で2回、文書で1回の申請。 互いに独立の2人の医師の承認による。 17年合法化のヴィクトリア州では 患者が自分…

西智弘『がんを抱えて、自分らしく生きたい がんと共に生きた人が緩和ケア医に伝えた10の言葉』

西智弘『がんを抱えて、自分らしく生きたい がんと共に生きた人が緩和ケア医に伝えた10の言葉』(PHP 2019) 〇医師と患者の関係を建築住宅販売業者と施主との関係に例え。 「これまでの医療の常識が『医師におまかせ』であった」(p.68)とし、それは建売住…

フロイド 表現されなかった感情

Unexpressed emotions will never die. They are buried alive, and will come forth later, in uglier ways. Sigmund Freud Alex Michaelides "Silent Patient" Part 2 表紙から

『かっこいい福祉』村木厚子 今中博之(左右社 2019)

今中……放デイは、小学生や中学生、高校生が対象です。対象年齢が低いこともあって、お稽古ごと感覚になりがち。また、ご家族は子どもの可能性を追い求め、いろいろな種類の放デイにアプローチする。一ヶ所の放デイだけを利用する子どもは限られています。一…

読売新聞社会部『孤絶 家族内事件』メモ 

読売新聞社会部『孤絶 家族内事件』(中央公論新社 2019) 子どもの障害や病気に悩んだ親が、子どもを手にかけてしまう殺人・心中事件は相次いでいる。 読売新聞が2010年1月から2017年3月までに起きた計50件(未遂含む)を調査・分析したところ、加害者は65…

田中智子『知的障害者家族の貧困 家族に依存するケア』 メモ

田中智子『知的障害者家族の貧困 家族に依存するケア』 2020年法律文化社 「いわゆる“親”としての役割を超えた多岐にわたる役割を担うことが社会的に要請されてきた」として、4つの役割を挙げている。 1.「介助者」としての役割。 2.「準専門家」として…

『いのちを選ばないで』メモ

『いのちを選ばないで―やまゆり園事件が問う優生思想と人権』(大月書店 2019) 第2章 事件の背景と要因――日本の社会保障・社会福祉と人権保障の貧困 4.障がいのある人と家族の人権保障の現状と課題 矢嶋理絵(首都大学東京人文社会学部教授) はじめに――…