安楽死による死に苦痛がないなんてエビデンスはカケラもない、と米の医師

www.christian.org.uk

Dr. Joel Zivot, Associate Professor of Anaesthesiology and Surgery at the Emory School of Medicine in Atlanta, Georgia debunks the claim that assisted suicide is a peaceful death. His evidence is based on his own review of autopsy reports from executions in the United States.

This interview was recorded before the House of Lords debate on Baroness Meacher’s assisted suicide Bill on Friday 22 October.

 

英国議会で、assisted dying合法化法案が審議されていることを受けての

キリスト教系のサイトの米国医師インタビュー。

 

Dr. Zivotは大学病院ICUの医師。

 

米国では死刑の方法が残酷でないことが法的に求められており、

麻酔科医として、その判断を求められた際の体験から、

薬物投与により死刑となる囚人は傍目にはかすかな動き以外には察知できないものの、

死刑になった囚人の解剖記録を見たところ、

8割以上がpulmonary edima 肺水腫を起こして死んでいることに衝撃を受けた。

これは、おぼれ死ぬのと同じということ。苦しんで死んだのでは。

 

医師幇助自殺で使われる薬物は死刑に使われるのと同じ種類。

 

(spitzibara注:米国で合法化されているのは、それらの薬物を処方してもらい患者自身が摂取する医師幇助自殺のみなので、こういう文言で語られているのだと思いますが、同様の薬物を死刑と同じ方法で医師が投与するのは積極的安楽死になり、この人が発している警告の対象となっているのは両方のように思います)

 

推進派は、医師幇助自殺なら苦痛なく穏やかに死ねると主張するが、

その主張にはエビデンスのかけらもない。

 

自分はICUで数えきれないほどの患者の死に立ち会ってきたが、

苦痛と不快を取り除いてもらっての死にこそ尊厳を感じている。

 

killing が treatmentになれば、かならずその対象は広がっていくし、

薬物を自分で飲めない人がいるからと、注射になっていく。

(自殺幇助から安楽死へとシフトしていくということ?)

 

(spitzibara注:この人はカナダで起こっているように、といっていますが、

カナダでは最初から積極的安楽死と自殺幇助の両方が合法化されているので

起こったのは対象者の拡大。

 

安楽死へのシフトの方は、17年から今年にかけて

ほとんどの州が合法化したオーストラリアで起こった。

17年、ヴィクトリア州が医師幇助自殺を合法化した際には

一般では余命6か月の人に自殺幇助のみが合法化され、

障害のため自分で飲めない人(余命12か月)にのみ安楽死が認められたが、

2年後、西オーストラリアは余命条件はそのまま一般にも安楽死を認めた。

今年のクイーンズランド州の合法化では、どちらも余命12か月で

安楽死が認められて、しかも医師から話を持ち出してもよいことに)

 

英国は、こうした国々に続くべきではなく、

なすべきことは緩和ケアの推進。

 

自殺幇助による死に方はpeacefulでdignified だという人には

エビンデンスを示せ、と返したい、と。

 

18年にTEDでも講演していた。

www.ted.com

30日午後追記

講演を見た。とても分かりやすい講演。

16分半。10分くらいから死刑の話になる。

解剖所見に記された肺の重さが意味すること。

 

冒頭の、お母さんの死後の螺旋階段の話も、

医療職と非医療職の感覚の違いを見せつけて魅力的。

 

一人でも多くの人に見てほしい講演。

 

30日夜追記

この人、Spectatorというサイトに記事も書いていて、

今日のBioEdgeが拾ってきた。

https://bioedge.org/end-of-life-issues/euthanasia/quick-and-painless-death-easier-said-than-done/

 

講演より詳細なようだけど、元記事は登録しないと読めない。

 

BioEdgeの記事の最後のあたりに、

患者は「眠りに落ちる」のではなく、筋肉が動かない状態になる、

という話があって、

 

オレゴンのPASで死ぬまでの時間の平均は30分、

案外に長い時間がかかっている、というデータも出ている。

 

それにしても、記事の最後、CA州でPASをやっている医師の言葉、

これが医師の口から出てくると思うと、やっぱり恐ろしい。

”Our job is to stop the heart; that’s what they want us to do.”

 

 

素人考えながら、肺水腫は死後に身体に起こったことという可能性は?

と思ったので、ある緩和ケア医に聞いてみたところ、

だいたい以下のようなお返事でした。

 

心臓が鼓動を止めたその瞬間、肺には心臓に流れていけない血液が急に貯留し、その結果浮腫になるだろう。肺水腫があるから苦痛だったと考えたい人、考えたくない人がいるだろう。自分は「分からない」。肺水腫を起こす前に、脳の活動は停止していると主張することは可能。

 

これから、Dr. Zivotの主張に対してどんな反論が出てくるのか、

注目しておこう。

 

人に教えてもらった昨日の毎日新聞の記事が、米国の死刑の失敗を報じている。

これはまた別の形で、Dr. Zivotと同じところを指しているのでは……?

https://mainichi.jp/articles/20211030/ddm/012/030/140000c