カーター判決に至るまでの訴訟関連の動き
1993年 Rodriguez v British Columbia カナダ最高裁の判決
現行の自殺幇助禁止を維持
2012年 Carter v Canada BC州最高裁判決
ロドリゲス訴訟の最高裁判決を覆す
2013年 カーター訴訟 BC州上訴裁判決
12年の同州最高裁の判決を覆し、ロドリゲス判決と自殺幇助禁止を支持
2015年 カーター訴訟 カナダ最高裁判決
13年のBC州上訴裁判決を覆し、
カナダ刑法セクション241(b)とセクション14を削除することにより、
自殺幇助を合法化。
ロドリゲス訴訟
Sue RodriguezはALSの患者。
医師から自殺幇助を受ける許可を求めて提訴。
刑法による自殺幇助の禁止は彼女からliberty and security of the personを奪い、right to non-inerference in persona decisions concerning the final stages of her life を侵している。
かつて自殺は殺人の一種と捉えられ、attempted suicideも刑法で罰せられる犯罪とされてきたが、1972年にattempted suicideは合法化された。
ロドリゲスは、この事実に基づき、障害のない人であれば合法に試みることができる自殺が、症状が進めば自分には不可能となるなら、法の下の平等に反する、と主張。
訴えがBC州下級裁判所に出され、その後、同州の上訴裁判所が却下したため、訴訟名はBC州のまま、カナダ最高裁へ。
Spinka判事の理路は、当時の時代背景を反映している。
当時の国際的な法的な理解では、自殺幇助は犯罪とみなされていた。合法化には濫用の懸念、サーフガードは機能しないと考えられていたなど、米WA州で1991年、CA州で1992年の住民投票でも合法化は否決された。
また、当時は患者が死に至る行為を、死なせることを目的にするか、それ以外を目的にしてその結果死を早めることになるかの違いも重要視されていた。
カナダ国内の各種医学会も当時は、自殺幇助合法化には反対のスタンス。
Sopinka判事は、意図的に他者の命を奪う行為は過ちだとする社会的コンセンサスがあり、法はその事実を尊重し、禁止を維持すべきだ、とも。
生命保護の観点からも、弱者への濫用の可能性やすべり坂のリスクからも、一律の禁止が望ましい。
が、判事数名がロドリゲスの論点を支持する反対意見を書いている。
ちなみに、ロドリゲス訴訟について触れたブログ記事は2012年3月24日のこちら