鈴木由美 基調講演 指定発言「重症心身障害病棟のコロナ禍における面会の実態と今後の展望(国立重症心身協議会参加施設調査より)」 日本重症心身障害学会誌第47巻1号 19~23(2022)

全国の重症児(者)病棟をもつ国立病院機構病院及び国立センター病院(全76施設)を対象

2021年10月から11月

既存の国立病院機構の病院間ネットワークを利用し、電子メールおよび国立病院機構のインターネットセキュリティ内のMS Teams 機能に含まれるFormsを活用してアンケート調査。

 

調査対象期間は2020年3月から2021年9月

回答職種は各施設の判断で任意

61施設(回収率80%)から回答

 

緊急事態宣言の発令状況 

なし     45施設(56%)

3か月未満   14施設(23%)

4か月以上   13施設(21%)

直接対面面会を実施していた平均期間

上記それぞれ 0

       0.9か月

       1.1か月

 

何らかの制限がある直接対面面会

それぞれ   5.6か月

       4.5か月

       4.0か月

 

直接対面面会禁止期間

それぞれ  13.3か月

      13.6か月

      13.5か月

(spitzibaraメモ:感染状況とは無関係に禁止されていたことが分かる)

 

最長連続直接対面面会禁止期間

それぞれ  10.2か月

      11.1か月

      11.2か月

 

「この一方で、直接対面面会を中止していた期間ごとに施設数を見ていくと、全体及び発令なしと3か月未満の群のそれぞれにおいて19か月、つまり調査対象期間を通じて直接対面面会を中止していた施設が最多となり、全体の23%にあたる14施設がこれに該当していた」

 

5.今後のコロナ禍における面会に関する展望

1)コロナ禍における面会で目指したいこと

制限のある対面面会 28施設(46%)

オンライン(リモート)面会と制限のある対面面会 9施設(15%)

オンライン(リモート)面会の充実        7施設(11%)

感染状況に応じた対応              5施設(8%)

 

「8割超から「制限なしの対面面会」ではない形式の方向性の回答があった」

 

Ⅳ.  考察

重症児(者)病棟は病院の中の病棟ではあるものの、社会福祉施設と酷似した側面もある。このため同施設向けに厚生労働省から発出される各種通知は、重症児(者)病棟における面会等の方向性を検討する際においても参考となる。全国一律に緊急事態宣言が発出されていた2020年4月7日に「面会については、感染経路の遮断という観点から、緊急やむを得ない場合を除き、制限すること」といった通知があり、全国的にほとんどの重症児(者)病棟が面会を中止した。その後同年10月15日の通知には「面会については(中略)地域における発生状況を踏まえ面会を実施する場合は以下の留意事項も踏まえ感染防止対策を行ったうえで実施すべきであること」となり、各種留意事項が具体的に示された。今回の調査では地域の流行状況に応じて緊急事態宣言の発出期間も大きく異なったが、これによる面会の中止や制限に関する差は大きくなく、むしろ緊急事態宣言の発出が0~3か月未満と比較的流行が大きくなかった地域で「19か月連続対面面会中止」の施設が最多であり、「地域における発生助教を踏まえた面会の実施」になかなか踏み切れなかった現状が窺われた。

 オンライン(リモート)面会については9割以上の施設が導入され、昨年の同時期の調査の47%からほぼ倍増していた。課題はあるもののおおむね好評であり、安全に患者と家族とが交流を図れることから、今後の活用継続が望まれる。しかし言語でのコミュニケーションが困難なことも多い重症児(者)との面会においては、直接の触れ合いによって得られる安らぎや喜びが得られないことによる影響も大きいと推測され、「思ったより利用者が少ない」という実態もあることが分かった。愛着形成といった面からも、長期間にわたる「オンライン面会のみ」という状況は望ましいとは言えない。新たな変異株の出現もありコロナ禍の終わりが未だ見えない現状であることから、流行が比較的落ち着いている際には、本人や面会者のワクチン歴や地域のワクチン接種率なども含めたリスク評価も勘案しながら「各種感染対策を実施して感染リスクを低減した形での直接対面面会」の実施が望まれる。

(p. 21-23)

 

 

p.22は国立病院機構 下志津病院新型コロナウイルス対応フェーズ表

院内対応フェーズ1~4

 

重症児(者)病棟の面会は

フェーズ1:2名まで15分以内、粘膜部分以外直接接触化の対面(予約制)

フェーズ2:2名まで15分以内、2m間隔を空け、直接接触なしで対面

フェーズ3,4:原則中止、ドアを開けずに姿を見るのみ可

 

重症児(者)病棟の短期入所は

フェーズ1:原則として個室で受け入れる+医師の判断で必要時PCR検査

フェーズ2~4:本人および身近な人でチェックリストに該当する症状があった場合は消失後2週間後から、チェックリストの他の項目で問題ない場合、個室(エアロゾル発生治療:二重扉)のみで受け入れ可、全員入院時PCR検査実施。

 

訪問利用・車いすの調整の業者さん・学生実習(チェックリスト確認+不織布マスク必須)

全病棟:フェーズ1~3:可能な限り患者もマスク装着、患者と1m以内接触15分以内(車椅子調整等必要時は必要最短時間まで)、職員ともマスクなしの接触はなし等位「濃厚接触」該当しない範囲で受け入れ可

フェーズ4:原則延期、緊急事態宣言発令中は原則受け入れ中止