『TOMO』2021年11月号 特集「コロナ危機での報酬改定~工賃、事業継続へのダブルパンチ」

TOMOの11月号の特集「コロナ禍での報酬改定」を読んで、

これからそうなるだろうなと思っていたことが、いよいよ露骨に

実行に移されてきた、と確信。

 

GHを柱に施設から地域へと追い出しにかかっていた国は、

今度はGHからの追い出しにかかってくるんだ、と。

 

以前からGHに民間企業の参入を進めることで

(しかも地域の福祉推進ではなく経済活性化策として)

軽度者だけの受け皿を増やし、全体としてGHの貧困ビジネス化を推進しつつ、

GHができたからというアリバイで重度者にも施設を作らない方針を正当化してきた。

 

こういう国の施策の方向性や、地域の支援資源の実態を置き去りにして、

施設か自立生活かの2者択一の議論をされても、

障害者のマジョリティにとっては、どちらも手の届かない高嶺の花。

実態は施設すら奪われて、当事者も家族も地域の事業所で働く人たちも

命の危機にさらされているのに……と、ジリジリしていた。

 

今回も、地域の障害者の暮らし方の理想形としては

アパートでの一人暮らしを目指すと国が言い出しているらしく、

自立生活のみを善とする障害者運動の一方的な主張は、体よく国に悪利用され、

地域への棄民のアリバイを与えることになっていないか。

 

 

「コロナ禍と報酬改定のダブルパンチ」

神奈川県 社会福祉法人あまね 理事長 海原泰江

 

●コロナ禍での支援の継続は、厚労省の通知により、生活介護事業所やGHでは、電話連絡などの実施で報酬を保障。ただし居宅介護支援事業所はキャンセルが出ても保証はなし。「ヘルパーの稼働がないので現状は何とかやりくりできているが」(p. 5)は、利用者側としてはどういうことになるんだろう? 身体介護は感染リスクを伴っているのに、そこに配慮がないことが疑問。

 

●今年2月に21年度以降の報酬改定が発表された。「『エ~。こんなに減額されたら運営が成り立たない』と思いました」(p. 5)

  生活介護事業所と共同生活援助(GH)で減額。GHは重度化・高齢化への対応で、区分3以下の人の夜間支援体制加算をはじめ、本体報酬も減額。生活介護事業所も全体に減額。

 改定の流れ全般としては、「障害支援区分の軽い方は障害福祉サービス事業を活用することなく一般就労へ。また、暮らしの場もグループホームではなく自立生活援助を活用して、地域での一人暮らしという流れを作りたいのではないかと勘繰ってしまいます。……障害支援区分が軽くても生活のしづらさを抱えている人は、私の周囲にはたくさんいます」(p.5)

 

●当法人のある横須賀市内のグループホームの設置状況を見てみると、「営利企業」が多く参入しています。法人格を持てば福祉事業への参入が可能となるなか、グループホームの設置を不動産会社が実施している実態には課題を感じています。営利ばかりを目的とする事業者の参入こそ、課題だと思います」(p.5)

 

「一段ときびしい運営に 生きづらさを抱えた仲間の支援」

埼玉県 社会福祉法人みぬま福祉会 オレンジホーム 施設庁 野崎壮一

 

●「報酬が十分でないために人件費を抑えるしかありません。少ない生殖だけではどうすることもできずに、非正規に頼りながらなんとか運営しています」

「きょうされん埼玉支部ホーム部会の実態調査でも非正規者の総数361名中、60歳以上の方が232名になっています。6割以上が60歳以上という調査結果は毎年変わりません。中には80歳を超えている方もいらっしゃいます。この方々がいなければホームは運営できません。皆さん一生懸命に働いてくれていますが、仲間たちが安心して生活していくためには働き手の数だけではない大切なことがあります」(p.7)

 

「報酬改定に振り回されて ”ひかり”輝く未来へ」

滋賀県 社会福祉法人蒲生野会 ライズ廿日市 児童発達支援管理責任者 小口望

 

●基準単価は年々削減され、2019年度と比較すると2021年度55単位(一人・日)の引き下げ。年換算で132万円の減収。

 

21年度の改定では専門的支援へのインセンティブをつける狙いの加算と思われる。

「実態は人員確保の厳しさがあるなかで人の確保は容易ではなく、専門的力量のある人の確保となれば、なおさら厳しいのが現実で、加算取得はそう簡単にできないのが実態です。……異動できる職員や専門的支援の有資格者がいない法人では対応できずに減収になるでしょう。

 そもそも……「営利ばかりを目的とした」企業の参入を認めたことにより「悪しき放課後デイサービス」と言われるような弊害を、加算・減産のしくみの強化で修正する方法はおかしいと思います。(p.11)

 

●「……今日、母親などが働きに行かないと生活できない家庭がたくさんあります。親などが安心して働けるように考え方も見直されてほしいなと思います」(p.11)

 

 

コラム「時論会説「障害者総合支援法の提示改定の中で狙われるグループホームの制度見直し」

居住支援部会 部会長 塩田千恵子(p. 12)

 

●22年1月からの通常国会で、障害者総合支援法の提示改定(3年ごとの見直し)。今回の一番大きな課題はGH制度の見直し。

 

●21年3月に厚労省の検討委員会により「グループホーム、地域生活支援の在り方事業報告書」。現在のGH3類型を見直し、自立生活移行支援型GH(通過型GH)と一般型GHにする。障害支援区分の低い人は通貨型の対象となり、一人暮らしを目指すことが求められる。通過型では標準利用期間が設定されて、継続的な利用は想定されていない。

 

●塩田氏の指摘として、生活の場の選択は本人の希望によるべきで、「障害支援区分による切り分けで一方的に決めるのは人権侵害になりかねない」「GHが一人暮らしに向けた『訓練』の場になっては生活の場に欠かせない安心安定が失われてしまう」

 

●その他、塩田氏が挙げる懸念として、GHの家賃補助の見直しへの言及。重度者のGHで「規模の要件の緩和」が述べられ大規模化の懸念。個人単位のヘルパー利用はGH職員で対応する方向性。

 

「……現状ではその(一人暮らし)ために必要な制度や社会資源、そして所得補償も不十分だ。障害のある人はなかなかアパートが借りられないなど、地域の偏見や差別も根強く残っている。報告書はそのような現状を一切顧みることなく、一方的に障害のある人の生活のゴールを「アパートでの一人暮らし」と決めつけていることに大きな問題がある。

 なぜこのような乱暴な検討が進められようとしているのか。そこにはこの10年間にGHの利用者数が2.5倍、費用額が約3.7倍に膨れ上がり、これ以上GHにかける公費を増やせないという国の財政上の理由がある。工費は増やせないが、毎年

GHの利用者は増え続け、重度化高齢化も進んでいる。そこで支援区分の低い人をGHから「卒業」させることが見直しの狙いなのだ」